第17話
「それで、どうするんだ?もう少し探索をするのか?」
依頼達成の証を証明するためにも魔石を回収すると俺は二人に話しかけた。
アイラはその言葉に対して、うなずく。
「もちろん。どうせなんだから、もう少し森の様子も見ておきたいしね」
「アイラ様がそういうのなら、ボクも従いますよ。」
「うん?シバルは帰ったほうがいいと思うか?」
「いえ、騎士団に所属していたころは、任務が終われば帰るというのが普通のことだったので、それが違うということに違和感があるということですね。」
「そうなのか…」
確かに、騎士というからには隊律があったりするのかもしれない。
それを乱すということはそれなりに悪とされるので、終われば帰るというのが当たり前だということが理解できる。
「今までは、隊としてそれなりに人数がいたので、一人でも何か異常があれば帰るというものでしたが、今はまだ早い時間で、ボクたちも負傷も疲れも今のところありません。だから、もう少し探索して、騎士団に恩を売るという形もいいと思います」
「いや、元騎士団のシバルが騎士団に恩を売っていいのか?」
「いいのです。こういうときに貢献しておけば、ボクたちがいざ何かあったときに助けてくれるはずですから」
「そういうもんかね」
「はい」
少し休憩をした俺たちはまずはということで、湖の周りを見てまわることにした。
そこはゴブリンが生活していたのだろう、食べ物などが置いてあった。
よく、物語なんかでゴブリンは退治するべき存在と言われることが多くあったけど、これを見たら、そう思うのも仕方ないのかな…
というのも食べ物などが、森に入るまでにいくつか町の周りに管理されていた畑があり、そこの野菜と酷似していたからだった。
ゴブリンが育てたというのは考えにくい。
それは畑などの痕跡がないからだった。
「これは…」
俺はそこからある一枚の紙を見つけた。
何かが書かれているものだ。
なんて書かれているんだ?
俺は疑問に思い、書かれている内容を聞いてみることにした。
「(なあ、これはなんて書いてあるんだ?)」
【それくらい調べなさい】
「(いや、そんな時間がないから聞いてるんだが)」
【なら、感じ取りなさいよ】
「(いや、無茶言うなよ、普通に無理だろ。そもそも俺にはそんな便利なスキルなんてないからな)」
【まあ、しょうがないわね。それにはこう書かれているわね。今日の午後から侵攻を開始するってね】
それを聞いた俺は、叫びそうになるのをなんとか我慢すると、再度聞く。
「(えっと、マジなのか?)」
【ええ、マジよ。ほら、聞こえるでしょ】
そう言われて、俺は意識して耳をすませると、それが聞こえた。
これは足音…
アイラとシバルはまだ、気づいていない。
「アイラ!」
俺は叫ぶと少し遠くであたりを散策していたアイラが驚いてこちらにやってきた。
俺もアイラに駆け寄る。
「どうしたの急に?」
「シバルは?」
「あそこよ。シバルー!」
「どうしましたか?」
「これを見てくれ」
俺は持っていた紙を二人に渡した。
「これは…」
「はい。これは…」
そこに書かれていた内容を見た二人は驚愕した。
無理もない、俺も見たときには驚いたものだ。
ただ、二人は内容だけにビックリしたのではなかったのだ。
「これ…どうしてゴブリンたちに人語で書かれた内容の紙があるの?」
「そうですね。これはやはり…」
「人の中で、モンスターと結託しているものがいるってことなのね」
「はい。」
「だったら、すぐにここから出ないといけないな」
「そうですね」
「シバル、どうしてなの?」
俺が言った言葉に納得するシバルと、疑問をもつアイラ。
これは今から説明してもいいが、あまり時間が残されていない以上、ここから逃げることのほうが先決だろう。
俺はアイラの手をとった。
「ただし⁉」
「すまない、説明は走りながらする。シバル」
「はい」
そして、走り始めた俺たちはしんがりにシバルがいる形で森の出口に向かって走り始めた。
「それで、なんですぐに逃げないといけなかったの?」
「それは、簡単な話で言うと、あの場所にいると、絶対モンスターが来るからだ」
「どうして?」
「紙になんて書かれていたんだ?」
「今日の午後から侵攻を開始するっていう内容だったけど」
「そうなんだな。それをあそこにいたゴブリンたちが持っていたということは、あのゴブリンたちもその侵攻に参加するというものだったと考えるのがいい」
「なるほど」
「あー、でもそれだけじゃあ、ないんだぜ。あれは俺様が出した依頼に誰か食いつくか試したものなんだからな」
急な第三者の声。
俺はすぐにアイラの腕を引っ張り、自分の頭も下げる。
すぐに上を何かが通過する。
「ほーやるじゃないか。あの速さでゴブリンを倒すだけのことはあるなー」
「ただし、アイラ様、そのままですよ」
そして異変に気付いたシバルが剣を抜き、その第三者に斬りかかった。
キンという音がなり、金属同士が当たりあう。
俺たちもその第三者の方を見た。
俺以外の表情が驚愕に包まれていたその男は、楽しそうに口角を吊り上げていた。
ただ、それが誰だかわからない俺でもわかることが、一つだけあった。
そいつの服装は、森に入る前の騎士団員と同じ恰好をしていたのだった。
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