第2話
【なんとかなったわね】
「ああ、おかげでな…それよりもどうして、俺のスキルが今のなんだ?」
【ふ、こちらの手違いね…】
「どういうことだ?」
【ほら、よくあるでしょ、転生させる人を間違えちゃってやつね】
「な、なんだと…」
【でも、ほらどうせまだ生きてられるんだし、いいじゃない?】
「でも、ヘンタイだぞ」
【それについては、事前に確認しておかなったこちらが悪いわね。だから、そのパンツをあげるからゆるしてよ】
「なんだと、パンツだと…仕方ねえな」
【この、むっつり】
「ちが、俺はただこれを捨てたところでゴミになるだけだから、もっていてやろうと思っているだけだ!」
【へえ】
自称神は疑ったような言葉を返してくるが、断じて違うのだ。
そう断じてだ。
それにこんなところで、俺以外の男に拾われてみろ、それこそヤバいんじゃないのか?
だったらスキルで使うことができ、さらには自称神のことを知っている俺であれば悪用をしないということを理解してほしいものだ。
そんなことを考えていると、また自称神から、声が聞こえる。
【ま、全部わかるからいいんだけどね】
「く…俺の心を見るな…」
【ま、わかったわよ。それにずっとリンクするのは疲れるから、こうやって話をするくらいのほうが楽だからいいわよ】
「どういうことだ?」
【ふふふ、神の秘密ってやつよ】
「そうかい…それで、神とやら、なんて呼べばいいんだ?」
【あ、そっか…名前は教えられないけど、呼び名がないと不便だよね…まあ、どうせだしスターなんて読んでもらおうかしら】
「わかった…俺は…」
【さすがに名前くらいはわかるわよ。
「ああ、あってるよスター」
【ふふふ、ただしでいいかしら?】
「いいぜ、それじゃよろしくな」
【こちらこそ】
そんな会話の後、ゴブリンの死体を確認した俺はようやくというべきか、異世界に転生したのだということを理解した。
いろいろなことがいきなりすぎて、いまだに実感をしろと言われても難しいが、これだけいろいろなことがあったのにしっかりと体は疲労感があるし、夢であればさっきゴブリンに殺されそうになったときにハッとして目が覚めるはずだ。
ほら、言うだろ、そういう夢を見たときは長生きをすると…
それに何もかもがリアルすぎるしな…
あの温かさとかな…
いや、考えるな俺よ。
それに他に考えることがあるだろう。
最初にいた神殿にある石段に腰をおろしたところでスターに話しかける。
「それで、この後はどうしたらいいんだ?」
【えっと、あなたはどうしたいの?】
「く…質問を質問で返されるとは思っていなかったが、とりあえず町に行きたいな」
【そうね、確かにこれから生活するにも拠点が必要ね。その前に一つやっておくことがあるわよ。】
「なんだ?」
【ゴブリンの死体に近づきなさい】
「わかった」
俺は言われた通りに、ゴブリンの死体に近づいた。
強化されたパンチはかなりの威力があるようで、本当に一撃で倒せていたようだ。
そんなゴブリンの死体から、光るものを見つける。
「なんだこれ?」
【魔石よ】
「魔石ねえ…急に異世界というよりもゲームみたいだ」
【まあ、想像通りといえばいいわね。それを町にもっていって、換金してもらうのよ】
「なるほどな」
大きさはビー玉くらいだろう。
普通であればポーチなんかが欲しいところだが、今はそういうものがない。
仕方ないのでポケットにしまうことにした。
そこで気づいたのだが、自分の服装が見たこともないような服装だった。
この世界のものだろうか、前世といえばいいのか、そのときに着ていたのが、スーツだったのに対して、今着ている服はただのシャツに下もジャージのようなものだ。
なんだろう、見た目からしても転生したという実感がないのだが…
まあ、でもこれがこの世界の常識の恰好というのなら、我慢するしかないだろう。
少し貧相に見えるのだが、仕方ない。
「それで、こっちに進んだらいいのか?」
【ええ、そのまま進めば町が見えてくるわよ】
「了解。それで、最初は何をするのがいいと思う?」
【それは、その魔石の換金と、そこから情報収集するのが一番だと思うわ】
「なるほど」
そこは王道の転生ストーリーというものなんだな。
そんなことを思いながらも真っ直ぐに森を進む。
獣道をある程度進んでいくと、急に少し舗装された道にでた。
「これは…」
【ええ、しっかりと舗装された道ね】
「いや、見たらわかるよ。まあ、舗装の仕方は昔って感じだけどさ」
見ればわかった。
地面はしっかりと舗装されているが、俺が知っているようなコンクリートで道ができているというものではなく、レンガを敷き詰めただけのものだ。
それでも先ほどの獣道よりもかなりマシなので、いいことかと思い、のんきに歩いていた時だった。
「きゃああああ!」
女性の悲鳴が聞こえる。
「おい!」
【ええ、とりあえず行ってみましょう】
俺は声がする方向に向かった。
舗装された道から少しだけ外れた道にその女性がへたり込んでいた。
その目の前には二人の女性だと思われる人がモンスターに襲われていた。
先ほどのゴブリンが、俺の半分くらいの大きさの見た目に関して、今度の鬼のような顔を持つモンスターは俺の二倍以上の体躯を誇っている。
「あいつはなんだ?」
【あれはオーガと呼ばれるモンスターね。先ほどのゴブリンよりも数段強いモンスターになるわね。】
「それは…」
【ええ、下手に戦うのは止めたほうがいいわね】
「そうか…」
気づかれないところで見ていたので、そのままこの場を離れようと俺はした。
ただ、先ではオーガが女性を襲っている。
それでも転生した身で、そんなすぐに無理やり戦いを挑んでいく。
なんてことは無謀にもしょうがなかった。
だから立ち去るべきだったのだ。
「おい、女よ」
「なんだ!」
「その主人をここで置いていけ、そしたらお前を命は助けてやろう」
「ふ…嫌だ!そんなことをすれば私は騎士の風上にもおけなくなってしまうだろう!」
「騎士道とかいうものか?本当に人間というものはそういう間違った思考で命を落とすということがなぜわからんのだ?」
「何を言っている。どちらにせよゴブリンの孕み袋にでもしようとするのだろう?そんなことにはならない」
「フハハハハハ!よい心構えだ。だが、そのお荷物の主人を抱えたままでお前は何ができるのだ!」
「く…」
そう言うと、オーガは人の体躯はあるこん棒を振り上げた。
女性騎士も手に盾を構えて防御しようとする。
「なあ…」
【どうしたの?】
「俺なら助けられるか?」
【そうね…ヘンタイになりきれるならね】
「ふ…仕方ないというやつか…」
俺はポケットに手を入れる。
そこにはしっかりとした感触があった。
ふ…
こんなものを被って力を得るなんてことは嫌だが、女性を助けるためだ、仕方ない。
俺はそれをしっかりと広げると頭にかぶった。
[ヘンタイスキル 肉体強化]
「力が湧いてくる。ただ、なんださっきよりも力が弱くなっているような…」
【それはあなたのヘンタイ度が先ほどよりも緩和されているからね】
「どういうことだ?やっていることは同じだろ?」
【慣れてきてしまっているのよ】
「そ、そうなのか?」
【ええ…】
まだ今回で被るのは二度目だというのに、もう慣れてしまっているというのだろうか?
それじゃ、俺が変態みたいじゃないか!
そんなことを思っていたときだった、オーガが振り上げたこん棒が、振り下ろされる。
ガキンという音と、女性騎士が受け止める音がした。
「ほう、やるじゃないか!」
「ふ、この程度!」
「口は威勢がいいな。体はそうではないのだろう?」
「く…」
確かに受け止めた後に女性騎士の体は少し震えていた。
それは先ほどの攻撃が強すぎたための恐怖からか、なんなのか…
わからないが、このままではいけない。
そう思った俺は覚悟を決めた俺は近くにあった石をオーガに向かって投げつけた。
「なんだ?」
突然飛んできた石に、それでもしっかりと反応したオーガはこん棒をもっていなかった左手で石を掴み取る。
オーガはこちらをぎろりと見たとき、俺はしっかりと立っていた…
そう被ったパンツに右手をかけ、いかにも強そうという出で立ちでだ。
それを見たオーガ、そして女性騎士騎士は叫んだのだ。
「「ヘンタイがいる(いやがる)!」」
と…
その言葉を俺は全身に受けたとき、体が熱くあるのを感じたのだった。
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