第3話

「力が湧いてくるだと…」

【それは、ただしが相手に変態だと思われたことによる効果ね!】

「なるほど…それで肉体強化の度合いが上がったと…」

【そういうことになるわね】


そんなことで強くなれるというのか…

理屈はわかるが、それでもくるものがある。

ただ、そんな俺を見ても相手のオーガはバカにしてくるように言ってくる。


「なぜこんなときに変態がいるのかはわからないが、それでも戦力にもならんな…」

「それはどうかな!」


まあ見た目を知るとバカにしたくなる気持ちは確かにわからなくはないが、それでも俺も人の心があるのだ。

傷つくというものだ。

だからこそ、先ほどと同じように石を投げた。

先ほどよりもスキルの能力が上昇しているからだろう、前と同じ勢いで飛んでくると思っていた相手は先ほどより速い速度で迫りくる石を慌ててかわす。


「ちっ、どういう能力かはわからないが、実力を隠していたのか?」

「ふ…どうだと思う?」

「くそ、いちいち人間のくせに俺様に質問を質問で返すとはな…そのふざけた恰好のままぶちのめしてやる」


その言葉の通り、オーガはこちらと同じように石を掴むと、投げてくる。

さすがというべきか、ものすごい勢いで飛んでくる石を俺は軽く避けた。

何も被っていないままだと避けられずにくらっていただろう。

でも今はまさしくヘンタイモード…

女性のパンチラ以外は全て避けられそうだ。

く…

ダメだ。

被っているせいか?

ヘンタイ的思考に引っ張られる…

顔に手をあて、たたずんでいると、オーガは舌打ちをする。


「恰好はふざけているくせに強いだと…」

「ふ…」

「無駄に格好つけているのが気に食わないが、まあいい。俺様の任務は別にあるからな」

「なに?」

「ふ、その変な恰好のまま見てな!」


その言葉とともにオーガはこちらに石を投げるとすぐに女性二人に向き合うともっていたこん棒を振り下ろした。


「まずい、避けるんだ!」


さすがに間に合わないと思い、叫ぶように言ったときだった。


「きゃああああ、ヘンタイ!我の前に絶対に通さない聖なる壁を作りたまえ、ホーリーバリア」


そんな絶叫ともいえる言葉とともに後ろに座りこんでいたはずの聖女と呼ばれた女性が立ち上がったのだ。

そしてすぐにスターから悲痛な言葉が聞こえる。


【まずい、逃げるのよ】

「どういうことだ?」

【説明は後、さっさとしなさい】


その言葉を聞いた俺はすぐに地面を蹴った。

急にしっぽを巻いて逃げ出した俺にオーガは一瞬笑ったが、すぐに聖女から放たれた光が、球体のように広がって、それにオーガは飲み込まれる。

なんかヤバいやつだ。

俺は背中に感じる冷や汗を、無視しながらも球体から離れたのだった。

落ち着いたところで被りものをとり、聞いてみる。


「それで、あれはなんだったんだ?」

【あれは、修道女の専用魔法よ。】

「魔法だと…俺には使えないはずの?」

【そうね。今更だけどその世界のことを説明しておくわ】

「遅くないか?」

【仕方ないでしょ。ただしがうるさくて、さっさとこっちに送ってしまった方が、会話が成り立つと思ったのよ】

「く…確かにあのときは何がなんだかわからなかったからな」

【そうでしょ?】


まあ、実際今でもこの夢のような出来事から覚め、全て夢でしたと言われたほうがまだ現実味を帯びるというものだ。

それでも今この瞬間が現実だというのなら、状況くらいはしっかりと把握しないといけないからな。

俺は近くにあった石に腰をおろすと話を聞く体制になる。


「それじゃ、話してくれるか?」

【わかったわ。まずはこの世界のことを話しておきましょうか。この世界は元の世界と違って、剣も魔法も当たり前の世界よ】

「いや、だったら俺にはなんで魔法が使えないんだ?」

【そんなの簡単よ。才能がないからね】

「な、なんだと…」

【ま、本当は転生させるのはあなたじゃなかったようなんだけど、何かの手違いであなたが連れてこられたのよ】

「いやいやいや…だったら転生させないでよかったんじゃないのか?」

【そうもいかないわよ。そうなったらあなたはただ死ぬだけよ…それでよかったの?】

「く…それを言われたらやるしかないな」


でも間違えたは、ないじゃないかと思う。

だったら俺と違って誰を転生させようとしていたのだろうか?

気になることは増えたがここでそれを質問しても、相手が誰なのか聞いたところでわからないだろう。

だったら聞くだけ無駄。

そう考えた俺は、さらに聞きたいことを聞く。


「それで、さっき逃げろって言ったのはなんでだ?」

【そうね。簡単にいえば、さっきの聖女って呼ばれてた女の子のスキルがケッペキだからよ】

「どういう意味だ?」

【この世界には全員がスキルには目覚めるのよ。それを使って生活を豊かにしていくって感じね】

「なるほど、ちなみに普通だとどんなスキルがあるんだ?」

【普通は、ノウチクや、ショウギョウ、サイホウなんかが多いわね】

「普通じゃないといえば何になるんだ?」

【そうね。コウリツカというスキルでは、魔法使いであれば、使う魔法の魔力を半分にできたりするわね。】

「へえ、それは便利な…」

【そうね】

「それで、俺みたいな変なスキルを持っているのは他にもいるのか?」

【わからないわ…スキルが発動すれば、こちらでも見られるようになるからわかるのだけれど、今のところは先ほどの聖女の女の子がケッペキというスキルを持っていたということくらいね】

「なるほど…確かに俺のスキルがヘンタイで、しかもあんな恰好で近くにいたら、ケッペキスキルが発動して、ああなるのも理解できるな」

【でしょ?先ほどの魔法はホーリーバリア。簡単に説明すると、害と認識したものを防ぐ魔法ね】

「そうか…でもさっきの魔法でオーガがバリアに触れた途端に体が消えていたんだが…」

【それは、ケッペキスキルで強化されてしまったからね】

「なるほど」


ということは、絶対に先ほどの女の子と出会うことのないようにしないといけないということか…

あんな体が消滅するような魔法はもらいたくないしな…

あとは…

ここからどうするかを考えないといけないことくらいかな。

まあ、本来の目的は町まで行くというものだ。

寄り道をしてしまったけれど、ここから気を取り直して町に向かえばいいことだな。

俺は少し周りを見てから、舗装された道に出ると歩き始めた。

転生先で始まる、無双できる俺の物語が始まるのだ。

そう夢をみて…

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