「短編版」無限の錬生師

るいす

第1話 異世界転移

目が覚めると私、冴島結城はお城の玉座の間の中心部分に寝かされていた。周りには私と同じように倒れている高校生と思われる男女が4人、その周りを取り囲むように甲冑を着た兵士が武器を掲げ取り囲んでいた。周りを確認している最中に4人も目が覚めたらしく、

「うお、なんだここは?」

「異世界転移来たー」

「ここどこなのよ」

「なに!ドッキリ?」

等と騒ぎ始めた。するとひと際輝いた甲冑を着た兵士から怒号が飛ぶ。

「皆の者静粛に、王の御前であるぞ」

それでも騒ぐのを止めない4人は兵士に武器を向けられていた。私?静かにしていたが武器を向けられたので大人しく両手を挙げておいた。やっと静かになったので玉座に座っている油ぎっとりで太った王様と思わしき人が話し始めた。

「ようこそおいで下さいました、勇者様方。この世界では魔王が復活し世界の存亡の危機にございます。そこで勇者様方には魔王を討伐しこの世界を救っていただきたいのです。まずはこの鑑定の水晶にふれ私どもに勇者の証をお見せください」


話し方は丁寧だが兵士に動きを強制させられる。私たち5人は鑑定の水晶とやらに触れさせられ表示された画面をメモに取られた。


島津 孝介  勇者  17歳  男 魔力1000 lv1

三島 大樹  賢者  17歳  男 魔力 900 lv1

床波 エリ  聖女  17歳  女 魔力 800 lv1

木原 由衣  剣聖  17歳  女 魔力 800 lv1

冴島 結城  錬生師 17歳  女 魔力   0 lv‐


最初の4人の時は王様をはじめ兵士たちもざわついていたが私の表示を見た瞬間全員が静まり返った。


気を取り直してひと際輝いた甲冑を着た兵士もとい騎士団長から説明が始まる。この世界では何をするにも魔力が必要で魔力はレベルが上がらないと上昇しないらしい。魔王が出現すると各地に散らばって存在しているダンジョンが活性化し、中のモンスターがあふれ出すスタンピートが多発して人類の生存領域が削られていくそうだ。勇者たちにはダンジョンを攻略して、スタンピートを食い止めることと魔王の討伐をお願いしたいとのことだ。


ここまで話を聞いて私は自分でいらない子だなと思っていた。すると4人がこちら見ている。そして一言。

「こいついらない(わ)」


そして私は開拓村に送られることとなった。なぜ殺されなかったかというと昔勇者召喚を行って同じように魔力のない人間がいたらしくその国はその人を殺したらしい。するとその後、その国では勇者召喚ができなくなったとのことだ。まあ死なないなら何とかなるかと前向きに生きることにした結城であった。



城から追い出されて1週間、ようやく開拓村に到着した。開拓村の人たちは私を連れてきた兵士をみてビクビク震えている。増税におびえているのだろうかと勘繰っていたら兵士から声が告げる。

「この者は此度の勇者召喚にて召喚された錬生術師である。魔力がないためこの開拓村で保護してもらいたい。多少の力仕事くらいはできるであろうから食料等を分けてやってくれ」

そう言うとここまで警護してくれた兵士たちは全員帰っていった。そしておびえていた男は私を見てニタニタと笑っている。女も私のことをさげすんだ目で見つめていた。そこで私は悟った。ここにいてはいけないと。先ほどおびえていたのは増税なんかではなくこの人たちは犯罪者で処罰されることを恐れていたのではないかと。結城は森の中へ逃げていった。


「まだ遠くに行ってないはずだ。さがせ」

私は開拓村の人たちに追いかけられていた。今は木の陰に隠れることで難を逃れているがいつ見つかるかもわからない。そんな状況で急に右手に痛みが走る。右手を見ると半透明のアメーバ状のものが私の右手に絡みついていた。私は右手を引き抜くと同時にアメーバの中にある宝石のようなものをつかみ取ってしまった。するとアメーバはとろけて消えてしまった。そして頭の中に声が流れる。


「スライムの魔石、ホムンクルスを生成しますか?」

私は頭の中でイエスと答えた。すると魔石と呼ばれたものが形を変え膨張し120cm程度の身長の子供に変化した。すごいと思っているとまた頭の中に声が聞こえる。


「ホムンクルスには命令を2つまで与えることができます」

私は、私たちに危害を加えたものを殺すこと。魔石を集めてくることの2つを命令し、また森に潜む。ホムンクルス達の数は分かるようで頭の中に

スライム:1

と表示されている。少し時間がたつとホムンクルスが魔石を1つ持って帰ってきた。私はその魔石を手に取りまたホムンクルスを作成する。そんなことを場所を移動しながら100回ほど繰り返した。

スライム:90


数が合わないのは何かにホムンクルスが殺されたためだろう。だが今のところはそのホムンクルスが戦う場所に遭遇したことはない。きっと遠くの出来事だろうと思っていた。


スライム:268


ホムンクルス達がどんどん増えていくのでスライムの魔石が結城のもとへ集まってくる。これだけいれば町に戻っても簡単に襲われることはないだろうと踏んで結城は町に戻ることにした。


町に戻ると一人の男性が死んでいた。その光景を見て結城は吐いてしまう。人の死体を初めて見たのだ。震えが止まらなかった。四つん這いになり吐きながらも落ち着こうとしていると一人の女性が刃物を持って近づいてくる。その女性は近くのホムンクルスを攻撃した。すると周りからどんどんホムンクルスが集まっていき、女性を押しつぶしていく。結城はその光景を見てまた吐いてしまった。結城が落ち着くころには女性はすでに息絶えていた。町に他の住人はいないのようで家の玄関は開け広げたまま放置されている。結城はこの世界でたった一人になった気がした。

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