第10話 トカゲの正体
ヨロイの襲来から五日。都内某所。
防衛隊の会見が開かれていた。
横長に並べられたテーブルに、軍服と白衣の人達が計十名ほど座っている。その真ん中に座っている軍服が総大将の竹岡だ。
キチッとした身なりで、厳しい目つき、立ち上がれば背が高く、ガタイもいい、ゴツいという印象だ。
テーブルの前を二メートル程空け、向かい側にはカメラがずらりと並び、報道陣がひしめいている。
すでに始まっていて、竹岡総大将がマイクを持って説明している。
「えー、被害状況と復旧状況は以上になります。なお本件について、他にも進展がありましたのでお話します。えー、トカゲの事なんですが、我々はヨロイと呼んでいるのですけど、そのヨロイの死骸を、戦闘後回収し、爬虫類の研究所に届けて調べていただきました。まーこれが、大変だったようで、ヨロイは頭が働くらしく、おそらく人間に研究されないように、死骸をほとんど残さず回収していってしまったんですね。で、なんとかパーツをかき集め、あと隊員たちの証言と映像を見てもらって、解明していただきました。」
総大将が、隣にいる白衣の人を見る
「爬虫類等を研究なさっている岡村教授です。あと、説明お願いします」
と、マイクを渡した。
「あっ。紹介いただきました岡村です。極日大学で爬虫類や両生類を研究しております」
マイクを受け取り、そう話すと、ぺこっと頭を下げた。見た目は白髪まじりの髪で、穏やかそうな顔つき、白衣の紳士といったとこだろうか。
教授はそのまま続けた。
「総大将のおっしゃる通り、かなり難しい作業でしたが、防衛隊の方々にはたいへん尽力していただきまして、たくさんのサンプルをいただけました。そして急ピッチで、研究、解明していったのですが、その結果、ヨロイは極めて人間に近い知能を持ったトカゲだと、いわゆる知的生命体であるという事が分かりました」
会場がざわつく。
「手の指は鋭い爪を持っており、伸縮できるようで、構造は人間に近く、爪をしまった状態なら人間の様に物を掴んだり、文字を書く事も可能だろうと推測されます。また、マシンガン等の武器を奪い、撃ち返してきたとの証言もありました」
横にいた助手と思われる白衣の人達がモニターを教授の左に持ってきた。
「これらは爬虫類の進化系で、新種の生物だと判断できます。全長は尻尾も入れると二メートルを超えますが、立ち上がった身長は百五十センチ無いくらいだと思われます」
モニターにオオヨロイトカゲと、ヨロイの画像が映る。指示棒で示しながら続ける。
「おそらく、このオオヨロイトカゲが何らかの原因で知能を身につけて進化していったのだと思います。このゴツゴツした鱗が特徴的ですが、まるで鎧を付けているようなんですねえ。今回のヨロイも同じ特徴がありました。しかし、イルカや猿など、他動物のDNAも発見されていて、まだ断定できませんが、そういったものとの交配も繰り返したのかもしれません。また、背中にトゲがある物、角がある物など、ヨロイは一種ではない事もわかりました」
教授は、マイクを通さず助手達と一言交わしてからさらに続けた。
「そこで世界の研究者、有識者たちと協議する事にしまして、各国のサンプルを分析解明したその結果、もはや爬虫類からも離れてしまっている事もあり、これらを、新たな生物枠に分類する事に致しました。その総称を爬鎧類【ハガイルイ】といたします」
モニターに爬鎧類の文字が映し出された。カシャカシャッとシャッター音。
「身体能力は人間の比ではないほど優れておりまして、頭脳は人間に匹敵する程のものを持っていると思われます。まだまだわからない事だらけですから、これから解明されていくと思います。分かり次第順次発表していきます。ひとまず今日言える事はここまでです。私からは以上です」
教授がマイクをテーブルに置いた。
「ヨロイは人間を敵だと思っているのですか?」
記者が唐突に質問をぶつけた。
「爬鎧類はどこにいるんでしょうか?」
「あの攻撃の目的はなんなのですか?」
立て続けに質問が飛ぶ。ボディーガード的な軍服組が報道陣との間に入る。
「本日はこれで会見は終了させていただきます」
軍服の一人がマイクを取り会見を終わらせた。が、記者たちが立ち上がり詰め寄る。
「まだ質問があります!」
記者たちに囲まれるのを回避するため、教授と総大将たちは足早に退室した。
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