第2話 「ガンゴンと鳴る音の正体は?」

Kさんは水族館で飼育員として働いていました。

その水族館には地下に巨大な機械室があり色々なシステムを制御しています。


そして閉館した後に夜から朝までの間。


持ち回りで従業員は機械室内にこもり、


異常が起きないかを監視しなければなりません。


ある時Kさんの番がやってきました。


機械室の奥にある監視ルームに入ったのが午後10時。


とは言え特にやることはありません。


定時に決まった見回りをする以外特にやることはないのです。


朝まで退屈な時間を過ごさなければならないのが何よりキツイといえる状況でした。


そのまま数時間を過ごした時、午前2時頃でしょうか。


警報が鳴りました。


何か異常が起きたのかもしれない。


まずは場所を確認して状況確認です。


扉を開けて機械室へ入りました。


すると、


ガン、ゴン、

ガン、ゴン

ガン、ゴン

ガン、ゴン

ガン、ゴン

ガン、ゴン


鈍い金属を叩くような音が響いています。


「これは配管の異常が起きたのかな」そう思いました。


場所は水族館ですから、たくさんの水を使います。


そのため機械室の上には送排水に使う巨大な配管が這いまわっていました。


その配管が異常を起こすと異音がなる事があるそうです。


とりあえず、音の鳴る方へいってみよう。


想って歩き出しました。


所が、歩くにつれ「おかしいな」と想うようになりました。



そこで、一旦足を止めて耳を澄ましてみました。


ガン、ゴン

ガン、ゴン

ガン、ゴン

ガン、ゴン


音は上の方からしている様なので、Kさんは上を見上げてみました。


すると自分の真上に配管がまっすぐ伸びている事に気が付きます。

 そして、その真横。すぐ右手にも並行して同じようにまっすぐ伸びている配管がありました。


 二本の配管の伸びた先。そこには横から伸びている配管が通っており二つはつながっています。



ガン、ゴン

ガン、ゴン

ガン、ゴン

ガン、ゴン

ガン、ゴン



耳を澄ましてみるとどうも音は右の奥の配管からしているようでした


ですが、それが段々遠ざかっていくのです。


「移動している?」


配管の異常なら動くわけがありません。


おかしいなと思っていると、


ガン、ゴン

ガン、ゴン

ガン、ゴン

ガン、ゴン

ガン、ゴン


音が左に折れました。


ガン、ゴン

ガン、ゴン

ガン、ゴン

ガン、ゴン

ガン、ゴン



そして、今度は自分の真上の配管の奥から近づいてきています。


この上になにかいるのかな?何かが物音をたてながら近づいてきている?


そう思いましたが、ネズミなどの小動物が立てている音とは思えません。


ガン、ゴン

ガン、ゴン

ガン、ゴン

ガン、ゴン

ガン、ゴン

ガン、ゴン


なんだろう、段々薄気味悪くなってきましたが、

音は近づいてきて、ついには


ガン!ゴン!


丁度真上で止まりました。


しかし、自分は配管の真下に居ます。

なのでその真上には何かが乗っていても見えません。


仕方なく場所を移動して、自分がいた辺りの上を見上げてみました。


すると、


「えっ!」


思わず声を上げてしまいます。



たかーい配管。大きな鉄のパイプの上。


50代くらいでしょうか。

作業着風の恰好をした男が腹ばいになって横たわっています。

手は前に腕を組むようにおいているようです。


「何しているんだろあの人? 」


普通そんなところに人がいる訳がありません。


登れるような場所でもないし、何か作業をしているようにも見えません。


あまりの光景に呆然としていると、

腹ばいのまま男は顔の前にヒジを前に立てました。


そして、まず右ひじを下の配管に思いっきり叩きつけるように突き立てました。


ガン!


続いて左ひじを同じように


ゴン!


彼はそのままヒジだけで配管の上をはいずりだしたのです。


ガン、ゴン

ガン、ゴン

ガン、ゴン

ガン、ゴン

ガン、ゴン

ガン、ゴン


その音をききながらKさんは意識を失いました。


気が付くと朝、同僚にたたき起こされます。


夢をみていたのかとも思いましたが、


彼が寝ていた場所は監視ルームではなく機械室の中。


配管を見上げて男の姿を見た場所だったそうです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る