禁じられた遊び
小柳日向
禁じられた遊び
日がカーテンの隙間から一条差し込む。暗い小部屋の中に差し込む光が、男の心情を劈く気持にさせた。
男は平素から孤独を趣向と出来ずに居た。時代の流れだろうか。不撓不屈の精神を持てたのなら、男の孤独癖は加速しなかったであろう。
間接照明が部屋を橙色に染める時、焼けるような夕焼けの中に放擲される。夕焼けは男を灼熱の地獄に叩き落とすが如く、さびしさに身を焦がした。
畢竟、ひとりぎりでは生きていけぬという事実が、男を劈くのである。
日の光が生み出した、行き場を失った影は、路地裏に吸い込まれ、無意識を凝集させた世界を作り出している。
影の中でこそ、その静謐な美しさを発揮する苔の如く生きられるのならば、男の本望であったに相違ない。
日の光があたるところで咲くであろう、これからの向日葵の耀く黄色を想起するだに、男を暗澹とさせるものはなかった。
部屋の隅に置かれたギターを手に取ると、軽く爪弾いた。
繊細な音が、小部屋に木霊すると、漸と呼吸が楽になる気がさした。
男はアルペジオで「禁じられた遊び」を何度となく繰り返し爪弾く。
孤独を是と出来ぬ現代人の一人である男は、その呼吸を確かめるように、丁寧に弦を弾くより術がなく、術無い音色は男の中を蝕まんとして、男はギターを投げ出し慟哭するより他なかった。
禁じられた遊び 小柳日向 @hinata00c5
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