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「ちょ、サキちゃん何してんの⁉︎」

「学校の保健室で好きな人と二人きり。エッチな漫画なら、したくなることは一つですよね」

「何言ってるのかな〜⁉︎ ここは現実! エッチな漫画じゃないよ〜⁉︎ 保健室の先生が入ってきたらどうするのさ!」

「催眠術で昏倒させます」

「危険! この子危険でーす!!!」


 俺が逃げようとすると、道命サキはうすく笑う。


「…………【動くな】」

「グギギギギ……」


 どこぞのラスボスキャラですかあなたは⁉︎

 俺がベッドの上でガタガタ震えていると、道命サキは甘ったるい声で語りかけてくる。


「さあ、物語も佳境ですよ。二人でいーっぱい仲良くしましょう? 今まで我慢してきた分、三歳も歳下の女の子にぶつけて、ワクワクしませんか?」

「ワクワク……しない……」

「どうしてですか?」

「だって、俺は、君のことが……」

「好きじゃない、ですよね。簡単ですよ。わたしが好きになれと命じることで、あなたの感情なんて簡単に変えられるんです」

「なら、なぜ、それをしない……!」

「…………」


 道命サキは、下着の上と下に手を触れて、生まれたままの姿になった。

 本当に肌色が白くて、美しくて、可愛い。


 彼女は、俺の目の前に立って、微笑む。


「きれいでしょう? サキちゃんが好きだって言ってください。それだけで、それだけでわたしは救われるんです」

「さ、サキちゃんのことは、好きだった……」

「好き、だった……?」


 道命サキは、涙目になって、迫ってくる。


「どうして! どうして今は好きじゃなくなったんですか!」

「サキちゃんは、中学生になって、完全に催眠術を自分のものにしてしまった。それで、自分の都合のいい方にばかり、物語を進めてきた。俺は、そんなサキちゃんを見て、恐くなったんだ……」

「え……」


 俺は、涙をこぼしながら語りかける。


「サキちゃんは、もっとこれから、強大な力を手にしていくだろう。サキちゃんはどうして、催眠術なんて始めたの? 自分のほしいものは、手に入った……?」

「わたしの、ほしいもの……」


 道命サキは、脱ぎ捨てた制服で、自分の体をそっと隠す。


「わたしはただ、三歳も年上の面白いお兄ちゃんに、振り向いてほしかっただけです……」

「サキちゃん……」

「でも、この力で天馬お兄様の心を完全に操ってしまったら、そこにもうわたしの好きな人がいないことはわかっているから、わたしは、わたしは……」


 サキちゃんは涙をぽろぽろぽろと零して、自分の指をパチンと鳴らした。


「……【こんな力、もういらない】」

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