第12話 本気

その夜、莉子は龍也に切り出す。

「あのお寿司のお金はどうしたの?」

「アレは…その…。」

「だろうね。言えないよね。どうせパチンコで勝ったお金でしょ?いくら使っていくら儲けたの?」

「そんなのどうだっていいだろ!美味いってみんな食べたんだし、オマエも満足しただろ!」

「残念でした。私は一口も食べていません。」

「…、ああ、そうだよ。パチンコで勝った金だよ。いいじゃないか、オレの金なんだし、子供達も美味そうに食べてたんだから…。」

「子供達はだませても私のことはだませないわよ。早く離婚届けに判を押してちょーだい。」

「オレ、訳分かんねー。」


真夜中。

みんなが寝静まり静寂の時間、莉子も疲れてソファで爆睡していた。

その時莉子の体に異変がおき、莉子は気持ち悪さで目が覚める。そこには龍也が莉子の上に覆いかぶさり、莉子の体を愛撫している姿が目にうつった。

「ちょ、ちょっと!何するのよ!」

「…ハアハア…。」

「止めてよ!」

「一年以上我慢してきたんだ。今日くらいヤラせてくれてもいいだろ…。」

「気持ち悪い!止めて!」

「もう…オレの体は止まらねぇ。」

「やめてー!」

「そんな大きな声出すと、子供達の目が覚めるぞ。」

「くっ…。」

莉子は龍也にされるがままになってしまった。

莉子は唇を切れるほど噛んでいた。


それは悪夢でレイプそのものだった。


次の日龍也は、満足気に爽やかな朝を迎えていた。

莉子は節約の為ずっと龍也のお弁当を作っていたが、この日から高校三年生のガクトの分しか作らなくなった…。


もうコレ以上屈辱で一緒に住むことは耐えきれない。そう思った莉子は泣きながらダイスケに相談する。

ダイスケは顔が広いから、知り合いの弁護士に相談しようと切り出す。

その弁護士は優秀な人で、こういう離婚調停に関しても、何件もこなしてきた人だった。

そしていざとなったら、家庭裁判所で争う覚悟を持つようにと、莉子にしっかり言い伝えた。


その日の夜、莉子は龍也に昨日の恨みを込めて、強く言い放った。

「このままアンタが離婚届けに判を押さなくても、こっちには知り合いの弁護士がいるんだから!家庭裁判所に行ってでも争うわよ!」

「裁判?!本気なのか?そんなに本気で別れたいのか?そんなにオレのこと嫌いになったのか?なんでだよ!」

「もう離婚届け見せて三年目だよ!アンタが改心するまで様子見るって言ったじゃない!ちゃんと猶予与えたのに、アンタは全然変わらなかった。そして昨日は嫌がる私に無理矢理セックスした…。もうそれって完全な犯罪だよ!DVだよ!いくらアンタが判を押さなくても、家庭裁判所で決着つけてやる!今までのこともノートに書き留めているからね!もう誤魔化せないんだから!」

「…」

龍也は茫然とした。これは事実であり、莉子は本気なんだとようやく気が付いた。

弁護士や裁判所の話まで持ってくるとは、思っても見なかった。


もうこれで龍也の負けは決まった。


龍也はしまっておいた離婚届けに名前を書き判をようやく押した。


これでやっと莉子は、八年間に渡る「計画離婚」を成立させた。


✤✤✤


その後龍也は弁護士から、毎月養育費1人五万円ずつ支払うこと、子供達には近寄らない、連絡もしないことを約束させられた。



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