第9話 スタート

前の晩、社長のダイスケに話を聞いてもらって、莉子は少しすっきりしていた。

そして離婚に向けて、どこからどう進めていくか考え始めていた。


莉子はダイスケを相談相手として、真剣に離婚しようと考えていることを相談した。

そしてここからダイスケも加わり、二人で「計画離婚」を考え始める。


まずは出来る限り貯金をしていくこと。そして龍也には絶対にバレないように進めていくこと。

子供達のことも考え、しばらくはこのままの生活を続けること。

ダイスケは少し考え、莉子に提案する。

莉子も絶対に失敗しない為に、ダイスケの話に耳を傾けた。


ダイスケは知り合いの不動産に頼み、良さそうなアパートがあったら教えて欲しいと頼んでいた。

いくつか紹介してもらったが、家賃が高かったり、家からあまり離れていない場所だったり…。子供達の学校の範囲もある。転校させたくないし、制服や勉強道具を新たに買う余裕はない。

そうこうしているうちに年月は絶ち、ガクトは高校一年生、ケントとレントは小学四年生になった。


✤✤✤


そして莉子はダイスケにひかれていった。ダイスケもまた、莉子の強さと優しさ、本当は弱いくせに強く生きようとする健気さにひかれていく。

お互い何となく同じ気持ちかな?と思っていたが、確かめ合うと「計画離婚」が仇になってしまうと思い、それ以上前には進まなかった。


一番は子供達を守ること!莉子の大切な課題だ。家では嫌味タラタラの義母に使われ、龍也に嫌でも抱かれ、時にはあまりの気持ち悪さで嘔吐することもあった。

それでも我慢我慢!「計画離婚」を失敗させない為に、必死で苦笑いをし耐えていた。


そんな時、ようやく良さそうな物件のアパートが見つかる。

莉子はようやくこれで、少し前に進めることが出来ると思った。


まずはガクトに「離婚」を考えていることを話す。ガクトは幼い頃からDVをされてきているので、返事はOKだった。一刻も早く龍也から離れたいと言った。

問題はケントとレントだ。

龍也は二人にはガクト程のDVをしていない。

機嫌が悪いとすぐに怒鳴ったり、DVをするが、パチンコで勝った時は安いお菓子を買ってきて、ケントとレントの機嫌を取っていた。

特にケントは龍也に懐いていたし、逆にレントには

「オマエは可愛くない!」

と言い、差別を繰り返していた。

それでも二人はそんな龍也がまあまあ好きだった。

そんな二人の気持ちを知っていたからこそ、なるべく龍也の悪口は言わないようにしていたし、二人を傷付けたくなかった。が、事実を話さずに二人をなだめることはとても難しい。

しばらくはガクトと莉子だけの秘密にしていた。

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