第4話 義母の本音
義父は家族に内緒でかなりの借金をしていた。
経営も破綻し、今の生活を下げることは出来なかったのだろう。
ギャンブルで儲かれば借金も返せる。そう思いギャンブルも派手にしていたが、少しでも儲けが出るとそれを元手にし、更に大勝負に出る。が、失敗。その繰り返しだった。
見栄っ張りな義父は、近所の仲間達との接待ゴルフも辞められず、飲み仲間との毎度のお店通いも辞められず、お金がないのにおごることもあった。
しかし気が付けば督促状の山。銀行からも、もう借りることは出来なかった。
そして遂に自ら命を経ったのである。
第一発見者は莉子。
それはショックで怖くて、しばらく眠れない日々が続いた。
借金は義父の保険で何とか支払った。
そして小さな広告会社も畳んだ…。
莉子と龍也は同じ会社で黙々と働いた。
しかし義母はこんなことがあったにも関わらず、のんびりし、足腰が痛いと言っては働くこともせず、家事もしなかった。
ひどい時には近所の人達とのお茶会で、保育園の迎えにも遅れることもあった。
義母は可哀想な自分を近所中にアピールしていた。
義母は龍也と莉子が結婚してから、義父がガクトと莉子を可愛がっていたことにも、面白くなかった。
特に莉子には敵対心を持っていた。
莉子は家事も出来るし草取りも雪かきも、そして会社での仕事もテキパキと出来た。
しかし義母はずっとお嬢様育ちで嫁いできたし、姑など初めからいなくて、義父の仕事全てで賄ってきた。
何一つ不自由のない生活だった。
二人の男の子、龍也と太一をもうけ、義父にとても喜ばれた。
順風満帆でずっと生活してきた。
そして義父が亡くなった後も、偽物の笑顔とニセモノの悲しみの表情で、近所の人達と気楽に話をするのが毎日の日課となった。
もちろん話題は嫁達の悪口。義母はこの時とばかりに、莉子の悪口を言い放す。しかも全く真逆のことを…。
「うちの嫁はね、子供放ったらかしで遊んで歩くし、家事も全然してくれないのよ。掃除はロクに出来ないし料理も下手でマズくて食べられたもんじゃない。私が足腰が弱いのを知っているのに、無理矢理家事をさせるのよ。孫はワンパクだし、孫の世話も私任せなのよ。」
と、口から出任せを言っていた。
✤✤✤
そんなある日、太一の彼女アキが妊娠した。
義母は龍也よりも太一を可愛がっていたので、アキの妊娠を喜んだ。
みんなお金がなかったから、記念写真だけ撮影し、アパートを借りるお金は義母が支払った。
義母は暇な時はいつでも遊びに来なさいと言い、龍也と莉子が仕事に行っている間、二階の莉子達の部屋を使わせていた。
太一は龍也が上司に頭を下げて、せっかく入った会社もとうに辞め、アキも働いていないから、二人はこの部屋でのんびり過ごし、龍也のゲームを思いっきり楽しむ日々が続いた。
そして結婚のお祝いにと、義母は、莉子が実家から結婚祝いにもらった二組の布団セットを、太一にプレゼントした。
莉子は仕事から帰り部屋が荒らされていること、布団がないことに激怒し、義母に直接聞いてみた。
すると義母は何食わぬ顔で、太一達にあげたと平然と莉子に伝えた。
莉子は悔しかった。
二度と部屋に入れないようにと義母に頼むが、義母はまん丸い目をし
「すみません」
と言いながらも、また二人を二階の部屋で自由にさせていた。
莉子はプツンとキレた。
この時から莉子は、ビールを浴びるように飲むようになった。
そんなある日、莉子の二度目の妊娠が分かる。ガクトが六才になったばかりだった。
ガクトは義父がいなくなってから、やはり寂しかったらしく、兄弟を欲しかった。
しかし忙しい莉子、怖い龍也に兄弟が欲しいとは言えず、寂しい思いを我慢していた。
だから莉子のお腹の中に赤ちゃんがいると聞いた時は、満面の笑みで喜んだ。
その日の夜龍也は荒れていた。
龍也は子供が嫌いだ。だからまた妊娠しているとわかると、すぐに機嫌が悪くなり、ガクトに八つ当たりをした。
そしてガクトが寝静まると龍也は莉子に迫った。
龍也は性欲が強く自分の調子に合わせてくれないと、機嫌が悪くなる。
莉子は妊娠が分かったばかりだかし、体も調子が悪いと断ったが、龍也は無理矢理莉子のパジャマと下着を脱がせ、自分の欲望のまま莉子を抱いた。
莉子は悲しかった。
こんなに冷たい人のことをなぜ好きになってしまったのだろうと、頭の中で思いながら龍也に抱かれていた。
そんな様子をおぼろげにガクトは見ていた。そして自然に涙が出ていた。
そんなことも知らずに、龍也はいつもより激しく莉子の体をむさぼった。
徐々に莉子のつわりがひどくなる。それでも家にいて義母と二人きりになるより、会社で仕事をした方がまだマシだと思い、家事と育児と会社とフル回転で頑張った。
そして四回目の産婦人科の受診の時に先生から、
「間違いないですね。心音が二つ聞こえるし体も二つ見えます。双子の赤ちゃんですね。」
と言われた。
莉子は喜んだ。
莉子もガクト一人では寂しいだろうと思っていたし、一度に兄弟が増えるのはとても嬉しかった。
早速龍也と義母に報告。すると二人はしかめっ面で、「双子」ということを喜んではくれなかった。が、ガクトは大喜び。
ぴょんぴょん跳ねながら莉子の周りを一周し、莉子に抱きついた。
「赤ちゃん楽しみだね。」
ガクトの笑みが莉子を救ってくれた。
莉子が七ヶ月の時、莉子は体調を崩し救急車で病院へ運ばれた。
過労だった。
何でも一人で頑張りすぎて、絶対安静の状態になった。
莉子の両親も莉子が倒れたと聞き、慌てて病院へ来た。
少し貧血気味だと言われ、莉子の母親が輸血をした。
幸い赤ちゃんは無事。莉子は尿の管を通し袋に入るようにし、とにかく動かないようにと言われた。
龍也と義母は莉子の両親に一応謝った。
そして今後は無理をさせないと誓った。
ガクトは莉子の寝ているベッドの側にも行けず、扉の向こうで泣きじゃくるばかりだった。
莉子の入院は二週間。
その間ガクトは、少し怯えながら家と保育園を行ったり来たりした。
時々義母の肩を揉み機嫌を取ったり、龍也に怒鳴られないように必死で大人しくしていた。
ママも頑張っている。僕も頑張らなくちゃと、小さな体と胸の中で寂しさをこらえていた。
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