第4話慣れ

「それで?」


「詮索するのはやめろよ、どうして今日誘ったんだ?」


「かつの様子がおかしいからだろ?」

自信満々の顔で言われ、ドキッとしながらも少し笑みが溢れてしまった。

残りのスコッチを飲み干すと自然と言葉が溢れてきた。

「最近自分の心がわからないんだ

嫁の事はもちろん愛してる

そんな当たり前の事に慣れてしまっているんだ。」

なぜか裕也には自分の本心を話せてしまう。

どんな事でも、否定することはなく

ただ聞いてくれる。

それが居心地の良さなのかもしれない。

「裕也、オレは慣れるのが怖いんだ、嫌な事でも慣れてしまえば平気でそれが日常になってしまって

それがたとえ、幸せでもオレはそれに慣れると、潰れてしまうんだ。

今の仕事もプライベートも、オレは幸せだと思いたい、

それなのに、こんな日常に慣れてしまって、潰されいるんだよ。

けどこれが本当の自分の本心なんだと思うと、

人とのズレが恐ろしいんだ•••」


「そうか•••人とのズレか•••」


裕也にわかるはずもないのは、知っているのに

なぜか期待してしまってる自分がいる。

他人に、期待などすればするほど、他人とのズレに心を引き裂かれそうになるのに。


「かつすまない、正直オレにはわかんねぇよ、

オレは毎日楽しければいいんだ、

こうやってかつと酒でも飲めれば、それだけで、楽しいんだ。」

笑いながら話す裕也を見て、安堵した、

裕也の笑い顔がとても不自然で、それが優しさを含んだ作り出された笑顔だったから。

もしも裕也が、オレの事を理解できていたなら

これだけ親しくなれなかっただろうと。

だからこそ、かけがえのない友人で居られるのだと。



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