第7話 冒険者ランクはなぜか神級?
ギルドカウンターの前に立ち、俺は受け付けの女性に話しかける。名前はメイリー、幼馴染で昔は一緒に遊んだり風呂にも入ったことのある気心知れた娘だ。
小さい頃はつるぺたのおっぱいだったくせに、今じゃこれでもかとアピールされる巨乳っぷりに俺は目のやり場に困っていた。だって胸元からチラリと見えるブラが絶妙にエッチなんだもの。
しかし落ちぶれても元聖騎士、俺は性欲に負けるわけにはいかないのだ。おっぱいではなく、彼女の目を見て話すのだ。
「あ、ヨシュアじゃん。聞いたよ? 聖騎士を解雇されたんだって?」
「あぁ……そうなんだよ、最悪だ。せっかく聖騎士になったってのにさ……」
「あらら……それで今日ココに来たってわけね。冒険者にでもなるってこと?」
「そういうこと。生きていくには金もかかるからな、何もしないわけにいかないだろ」
「まぁね。ところで、アリシアは大丈夫? あの人、お金にうるさい人でしょう?? ヨシュアが無職になったなんて聞いたら──」
「出ていったよ…….手切れ金だと言って俺の金を全部持って嵐の如く去っていったよ……」
するとメイリーは大きなため息を一つついて言った。
「はぁ……。あのさぁ、だから私はあの子はやめときなよって言ったよね? 絶対ヨシュアは騙されてるって言ったよね?」
「ぐぬぬ……たしかに言ってたけども……」
「まったく、幼馴染の注告を聞かないからそうなるんだよ? 私の気持ちも知らないで……」
「ん? メイリー? お前の気持ちって?」
「鈍感ッ、朴念仁ッッ!! もういいわよ!! それで? 今日は一体どんな御用件でしょうか?! お、きゃ、く、さ、ま!!」
俺は何か悪いことを言ったのだろうか? メイリーはぷくりと頬をふくらませ、何故かぷんすこしながら俺の顔を覗き込むようにして言った。
迫るメイリーの顔とおっぱいに、いや、むしろおっぱいに『用件? それは君に会いに来ただけさ』と言いたくなったけど、幼馴染で昔からの友情を破壊しかねないと思い、我慢した。
しかしデカくなったなぁ、おっぱい。
◇
なんだかご機嫌ナナメなメイリーに、仕事や冒険の斡旋をお願いすること数十分。なんでこんなに時間がかかったのかと言うと、結局は冒険者登録の書き換えをしなければならなかったからだ。
俺は冒険者よりも遥かに格上の聖騎士という経歴があり、大聖女様から能力を授かったことからも、新たに追記する必要があるらしい。
さらには忌々しい冒険者ランクの更新だ。自分の立ち位置を示すのは冒険者として必須であり義務なのだ。自身の身分証にもなり、ランク付けや能力を冒険者カードに記載しなければならない。
この冒険者カードを通称マイランカーカードといって、冒険者は肌身離さず持たなければならないのだ。
ちなみにランク付けは以下である。
神級:超やっべえ厄災級を処理できる勇者様的な者。
聖級:大自然の怒りを沈められる大賢者的な者。
天級:魔物の大群を一網打尽にできちゃう大魔法士的な者。
豪級:魔物を一撃でぶっころしちゃう超戦士。
S級:冒険のスペシャリスト。
以下A〜Fまでランクがあるのだが、最底辺のFランクに至っては絶望的な文言が記されている。
F級:ご登録ありがとうございます。とりあえず装備から見直して下さい。徒党を組み、群れてない場合は絶対に死にますので一人で冒険に出る場合は要注意です。冒険者ギルドと致しましてはパーティーの参加をお勧めします。まずはスライム5000匹倒すのを目標にガンバ!!
フランクな最後の文の前に『絶対に死ぬ』と記載されているのだ。
とはいえ、俺は元聖騎士だしランク的にはS級とはいかないにしろ、A級レベルくらいだと思いたい。俺は冒険者カードに人差し指で印を押し、メイリーが「ちょっと待ってて」と言うと、魔導水晶板の測定器で再計測をする。
待つこと数分。
メイリーが新たに作り直した冒険者カードには驚愕の新事実が記載されていた。
神級である。
「ヨシュア……あなた一体どんな能力を持ってるの? 勇者様以外で神級のランクなんて初めて見たわ」
「え……? ちょっと待ってくれ。俺が、神級?」
メイリーの言葉に、俺はひどく驚いた。確か俺の記憶では、かつて冒険者登録をした時は最底辺のFだったからだ。
「私もおかしいなと思ったんだけど、測定器に不具合は見当たらないのよね……」
訝しそうに首を傾げる彼女から冒険者カードを受け取ると、俺も我が目を疑ってしまう。
うわ……マジで神級だ。
が、嬉々としたのは一瞬で俺はすぐにげんなりする。
それは俺の通称マイランカーカードにはこんな記載がされていたからだ。
――――――――――――
ヨシュア・マーフリー
23歳 男性
職種 元聖騎士 現在無職
ランク 神級
攻撃力 20.5
防御力 微妙
魔力 少し
素速さ 時と場合による
愛力 神と同等
性力 人類最強
幸運 限界突破
能力 聖なる◯◯◯格種
――――――――――――
なんともざっくりでふざけた内容だ。愛の力が神と同等で性力が人類最強? 幸運が限界突破だと? クビになったばかりで女にも騙された俺のどこに幸運が? なんですか素速さの時と場合によるって?
その上、防御が微妙で魔力が少し。それから性力が人類最強? 戦闘で使えないだろボケが!
ったく、この冒険者カード語彙力無さすぎだろ。
というか、冒険者カードにも俺の能力はわからないようになってるじゃないか! おのれ大聖女メルフィラめ……ぐぬぬ……!
まったく、神級なのは嬉しいが、とてもじゃないが冒険者たちに自慢できるような内容じゃない。
愛の力や性力で迷宮踏破や魔獣討伐なんてできるわけもないのだから。
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