第21話 終わりなき襲来に向けて





 ギガントワームとの戦闘は、激しい長期戦になるかもしれない。

 ……そう考えていたが、それは杞憂に終わった。



「はぁ!」


 ヴィランの剣がギガントワームの頭部を貫く。

 俺のスキル【釘付け】によって固定されたギガントワームは、図体が大きいだけの的になっていた。

 クイーン・ポイズンビーと戦った時よりも、動きを止めやすかった。鈍足であったからだ。


 大きさは同等。


 しかし、明確に動きに加わる力が弱かった。

 ギガントワームが暴れるより、俺が抑えつけるスキルの方が上手であった。  


 ……加えて、弾力のある肌質は、斬撃に弱い。

 ヴィランの攻撃を耐えることはまず不可能なのであった。


「ふぅ……終わったぞ」


 激戦ではない。

 一方的な蹂躙をこの目で見届け、俺は動かなくなったギガントワームを解放した。


「警戒したのが嘘みたいだったよ」


「確かにな。これで危険度Aランクは、大袈裟なことだよなぁ」


 クイーン・ポイズンビーと同等とは思えないほどだ。

 ギガントワームとの戦闘はこれが初めてであったが、無駄なく立ち回れてよかった。


 物足りないながら、達成感を感じていると、ヴィランは周囲を見渡す素振りをする。

 ……戦闘は終わったのに、だ。


「どうした?」


「……いや、他にはどれくらい潜んでんのかって思ってな」


「はっ……? どういうことだ?」




 ──ヴィランは何を言っている?




 まるで、まだ終わっていないかのような物言い。

 俺も瞬時に緊張の糸を張り直す。


「……いつからだ?」


「俺らが、ギガントワームを倒す少し前くらいからだ。うじゃうじゃ集まってきてやがった……」


 訂正。

 これはきっと簡単な依頼ではなかった。

 依頼書にギガントワームが1体だけとは、どこにも書いてなかった。

 つまり、複数体のギガントワームを相手にする可能性を示している。


「たくっ、やべぇ依頼持ってきやがって……」


 俺は瞬時に盾を構え、周囲に目を向ける。

 確かに、地面に複数のデコボコした跡が増えていた。


「何体だ?」


 ヴィランに敵の数を尋ねる。


「少なくとも20体以上はいるな……騒ぎに乗じて、寄ってくるやつもいるかもしれん」


「分かった」


 地中に潜む悪魔。

 ギガントワームの討伐は、そう易々と終わらなかった。


 結局、ギガントワームの猛攻を耐え凌ぎながら、全滅させるに至った時には、辺りの景色は夕焼色に染まっていた。


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