第18話 戦いは続く……





 夕暮れ時。

 我が【エクスポーション】のパーティハウスは大いに盛り上がっていた。

 各々に酒が入っていたからではない。


 ……昼間に討伐したクイーン・ポイズンビーの報酬がとんでもなく高額であったからだ。


「おお、これは凄いな」


 金貨30枚。

 これだけの稼ぎがあれば、5人であっても2ヶ月くらいは働かなくても生きていける。

 クイーン・ポイズンビーの成長度。

 あの個体がかなりのサイズであったことから、冒険者ギルドからの謝礼が多めに支払われた。


 ──久々の大金だな。


 Sランクパーティである【エクスポーション】であるが、その資金源は長期的な個別依頼を受けることによる高収入から成り立っている。

 今回のように、短期での討伐依頼だけでこれだけの大金を手にできるというのは、本当に稀であった。


「凄いですね! これだけ稼げれば、休暇とか増やしても良さそうです」


「確かにね。ここのところ働き詰めだったし、僕はいいと思うよ」


 アイリスとアレンは、しばらく休む期間を設けてもいいのではないかと意見する。

 俺としても、少しくらい息抜きがあってもいいのではないかと思っている。

 そう思い、ヴィランの方に視線を向ける。

 このパーティのリーダーはヴィランだ。

 常に酒を飲み、フラフラしているが、リーダーだ。



 ……あれ? なんか、頼りなくね?



「ヴィランどう思う?」


 まあ、こんなんでもまとめ役である。


 一応尋ねてみると、ヴィランは考え込んでいた。

 てっきり、酒が好き放題飲めると喜んで承諾するものと思っていたが、違うみたいだ。


「どうしたのよ?」


 ヴィランの悩ましい姿を不審に思ったモナがそう聞く。


「いやなぁ、休みか……」


「なによ。リーダーは休みたくないってこと? 酒飲む以外に考えてることでもあるの?」


「いやぁ、酒だけに狂酔してるわけじゃあないんだぞ」


「だったら、渋る理由を教えなさいよ」


 ──おお、詰め寄る詰め寄る。

 モナの遠慮のない言葉責め。

 ヴィランは「ああ」とか「ううん」などと要領を得ない声を出す。

 ヴィランを悩ませるほどの理由とは何なのだろう?

 純粋に気になる。

 悩むことなんてないような男だと思っていた。



「ヴィラン、悩みでもあるのか? 話くらい聞くぞ」


 だから、ヴィランがどうしようもない自体に直面しているのであれば、俺が手を差し伸べてやらなければと、そう思った。

 思ったから、ヴィランに真剣な眼差しを向けた。


「レオ……」


「仲間だろ? 困った時くらい頼れよ」


「──っ! ああ、そうだな!」


 ──全く、手間のかかるおっさんだ。

 俺を含め、アレン、アイリス、モナは、仕方がないなぁというような顔でヴィランの言葉を待つ。


 ……そして、ヴィランはぽつりと呟くのだ。



「悪い。ついさっき、別の依頼を受けちまった。結構ヤバいやつ……」


 一同は、絶句するのであった。


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