第16話 クイーン・ポイズンビー討伐(後編)




 クイーン・ポイズンビーとの我慢比べ、アレンが削り切るのが先か、俺が目の前の虫を手放すのが先か……。

 ──ん〜、やばい。キツい!


 予想以上の地力があるクイーン・ポイズンビー。

 そろそろ【釘付け】で盾の前に縛り付けておけるのも限界に近いかもしれない。


 アレンの攻撃の手は緩んでいない。

 しかし、クイーン・ポイズンビーの勢いは未だ衰えず。

 有効なダメージを稼げていないのだ。


 ……かと言って、ヴィランのおっさんは、ポイズンビーの残党からアイリスを庇っている。呼べる状況ではない。


 仕方がない。

 一度体制を立て直すかと、【釘付け】を解除しようと思っていたその時。


「アイシクルドロップ!」


 巨大な氷柱が空中に出現。

 そのまま重力に任せて落下し、見事にクイーン・ポイズンビーに致命傷を負わせた。


「お待たせ、魔力を戻すのに時間がかかっちゃったわ」


 涼しい顔で、モナはそう告げる。

 アイリスの方は……。


「はぁ、なんとか……間に合った」


 モナを復活させるのにかなり苦労したようだ。

 力を使い切ったアイリスは地面に膝をつき、それをヴィランが守っている。

 ポイズンビーがアイリスに狙いを定めても、問題なさそうだ。


 そして、こちらの戦況も好転した。

 完全復活したモナとうちのエースであるアレン。

 2人合わせたら、流石のクイーン・ポイズンビーであっても、長くは持つまい。


「モナ、一気にけりをつけるぞ」


「分かってるわ!」


 アレンの速撃とモナの安定した物理、魔法の両攻撃。

 クイーン・ポイズンビーは、力なく地面に伏すのであった。



▼▼▼



「お疲れ様」


 クイーン・ポイズンビーを討伐した帰路。

 モナは、俺の肩にポンと手を乗せた。


「ああ、モナのおかげで安定した戦闘ができたよ」


「そう、それなら良かったわ」


 モナは顔を赤くしてそっぽを向いた。

 彼女は褒められるのが苦手なのである。

 ……過去に褒められたり、賞賛されるような機会が少なかったからだ。


 ──ツンツンしてるが、やっぱりコイツは優しいやつだよ。


「いつもありがとな」


 そう俺が言うと、やっぱりモナの顔は赤くなる。

 ふむ、面白いな。

 こんな可愛らしい一面のあるモナであるが、過去には色々とぶつかり合うことも多かった。

 彼女は、特別な女の子だ。

 それ故に、パーティに加入した当初は、どう接していいのか分からなかったからな。


 ……モナは、俺たち【エクスポーション】のメンバーとして1番最後に加入した。

 【エクスポーション】で冒険者をやる前の、モナは……。



 ……なんと、貴族令嬢であった。


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