第6話 それはお前が悪いって……




 【エクスポーション】のパーティハウスの扉が開かれる。


「ただいま〜、ギルドの華が今、帰ったわよ」


「遅くなってしまい申し訳ありません。手間取ってしまいました」


 ──来たか。


 黒髪と白髪。

 対照的な色合いの2人がパーティハウスの玄関へと入ってくる。


 入り口の方に目を向けると、そこにはパーティメンバーのモナとアイリスがボロボロの装いで立っていた。

 ──んで、2人は、なんでこんなに満身創痍なんだろうか?


「なんかあったのか?」


「なんでもないわ。途中で槍が折れちゃっただけ」


「それは、死にかけみたいなものだろうが……」


 ふてぶてしく受け答えをしたモナは、折れた槍を両手で見せてくる。

 ──こりゃあ、ポッキリいったな……。


「よく生きて帰ってこれたね」


 アレンが不思議そうにそんなことも尋ねると、モナの横にいるアイリスが控えめに手を挙げた。


「……えっとね。モナちゃん、槍が折れた後に素手で戦ってたから」


「はぁ……? アイリスの言っている意味が分からん」


「ちょっと、言わない約束だったでしょ⁉︎」


「で……でもぉ……」


「素手って……なんだよそれ。ぷっ……」


「あっ?」


 アレンの清々しいくらいの爆笑にモナは、イライラを募らせたような顔をしている。

 ──はぁ、仕事終わりだってのに騒がしいったらないな。


「ねぇ、アンタ。よっぽど死にたいようね? 表に出なさい」


「いやぁ、それは困るよ」


「は?」


「素手で痛めつけられたらたまったものじゃないからね」


「……コイツ、絶対泣かす!」


 取り繕うこともなく、貼り付けたかのような淑女らしい言葉遣いをモナは忘れたように暴言を吐く。


「そんなに怒らないでくれよ。僕らは仲間だろ?」


 モナは、アレンの襟首を掴む。


「アンタ……そんな言い訳が通用するとでも思っているの?」


「ハハッ……レオ、頼む。なんとかして」



 ──哀れだな。だが、お前の自業自得だ。

 首を振り、どうしようもないということを伝える。

 モナを怒らせたら、気が済むまでやりたいことをさせてやるしかない。

 そもそも、これはアレンが悪い。

 同情の余地などないのだ。


 今回の場合は、アレンと模擬戦でもすれば収まるような事例であろう。ならば、アレンがその相手をしてやるのが一番いい。


「じゃあ、私はこの女好きと外で遊んでくるから……絶対に来ないでよね?」


「は、はい……」


「うん……」


 モナの眼力は恐ろしかった。

 石にでもされたかと錯覚するくらい、俺とアイリスは固まったかのように動かなかった。

 ……いや、動けなかった。


「行くわよ」


「う……ちょっと、死んでくる……」


 青い顔でまだなんとか爽やかさを保っているアレン。

 ──あの余裕はいつまで持つんだろうな?

 連行されていったアレンの後ろ姿を眺めながら、俺は、静かに合掌するのであった。


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