第3話 酔っ払いのパーティリーダーは偉大な創設者?






 Sランクパーティ【エクスポーション】の人員は、低ランク帯で始めた頃から何も変わらない。



 初期メンバー5人によって、構成される少数精鋭のパーティ。

 そのひとりひとりがSランクパーティに相応しい実力者である。それと同時に、このパーティーメンバーには共通点があった。レオを含め、全員が訳ありというところである。



「リーダー帰りました」



 風情ある一軒家。

 我らが【エクスポーション】のパーティハウスである。

 アレンは、その扉を開けながら、中にいるはずの人物へと、声をかける。


「おう、おかえり。アレン、レオ」


 声の主は、あの時俺を拾ってくれた恩人であり、この【エクスポーション】のリーダーでもあるヴィランという中年の男であった。

 茶髪であまり特別感のないヴィラン。

 それでも、このパーティを開設することができたのは、彼が俺たちを集めてきたからである。



「遅くなりました」


「右に同じく」


「気にしねぇよ。もう飲んでっからさ!」



 酒の入ったボトルを掲げて、髭面のヴィランは高らかに言った。

 顔はやや赤く、目は虚ろに揺れている。


「いやいや、飲み過ぎですって……」


「なんだぁ? アレンは、心配性だなぁ」


「俺も飲み過ぎだと思うけどな」


「んあっ⁉︎ レオもか!」


 ヴィランは、少し拗ねたような顔をする。


「たまには……いいだろ」


「毎日飲むことをたまにとは、言わないよ」


 ヴィランの酒豪っぷりに呆れながら、俺とアレンは各自椅子に腰を下ろす。


「それで、あの2人はまだ帰ってないのか?」


 ヴィランに尋ねる。

 ヴィランは、真っ赤に染まった酔っ払い顔のまま、天井を見上げて、目を瞑った。


「……頭痛い、吐きそう」


「おい」


「すまん。ちょっ……お手洗いをお借り致す!」


「普通にトイレって言えよ。気持ち悪いな」


 そそっかしく、ヴィランはトイレへ駆け込んだ。

 ──たく、肝心なこと聞けなかったじゃねぇか。

 特に理由などはないが、この場にいない残り2人のパーティメンバーの所在を確認しておきたかった。


「モナとアイリスが心配か?」


 アレンがそう聞いてくる。

 首を横に振り、軽く息を吐く。

 そんな大層な理由ではない。


 ふと、ヴィランに尋ねていただけのことだ。


「そんなんじゃねぇよ。ただ、あの2人にしたら帰りが遅いなと……」


「なんだ。やっぱり心配なんじゃないか、相変わらず2人に甘いんだな」


「だから違うって!」


 言い合っていると、トイレからヴィランが出てくる。

 どうやら、ひと通り出し切ったのか、スッキリした面持ちである。


「なんだぁ、ガキども。喧嘩か?」


「違いますよ。レオは優しいなということを話してただけです」


「おい、本当にちげぇから」


「照れるなよ。僕の相棒のことは、僕が1番理解しているんだ。なんら不思議なことじゃないよ」


「……いや、1番理解しているのは、本人だろ」


 屁理屈を並べる俺にアレンはいい笑顔で対応を続けるのだった。


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