第2話 3年後、Sランクパーティの一員となっていた




「レオ〜! 助けてくれ〜!」


「……はぁっ!」


 迫り来る多数の人型モンスターが繰り出す攻撃を大盾1枚で受け止める。

 装備している重々しくも、頼もしい盾は、モンスターの度重なる攻撃を全く感じさせないほど微動だにしなかった。


「仕返しだ! はっ!」


 先程助けを求めた金髪の青年は、俺の背後から飛び出して、刃輝く長剣を素早く振り抜き、モンスターを難なく仕留めた。

 まるで風のように素早く動くその姿は、目で追うのも大変なくらいである。


「助かったよ。ありがとうレオ!」


「パーティなんだから、当たり前だろ」


「流石は、僕の相棒だ」


「だろ?」


 俺は、肩を並べて戦った青年とハイタッチをし、気持ちのいい音を鳴らした。


 Cランクパーティを追放されてから3年。

 俺は、最強格の冒険者が集うSランクパーティの一角を担うまでになっていた。



 ──追い出された時から考えると、こんな風になるなんて夢にも思わなかったな。


 空を見上げながら、そんなことを考えた。



▼▼▼



「見ろよ。Sランクパーティ【エクスポーション】の2人が帰ってきたぞ!」


「大量発生した壁外のモンスターを駆除してたんだとさ、1つのパーティだけでこなせるような難易度じゃないだろうにな。流石、国に3つしかないSランクパーティなだけあるよ」


「【毒壁の守衛レオ】と【疾風の勇者アレン】。その名は伊達じゃないってことだろ」


「たった3年で、Sランクに成り上がったんだ。並大抵の奴らじゃないぜ。天才達の集まりみたいなもんさ!」


「エクスポーション! 今日もありがと〜!」


「きゃ〜! レオ様〜、アレン様〜」


「ああ……アレン様が手を振ってくださったわ!」


「気恥ずかしそうにしてるレオ様も可愛い!」



 俺たちが街に戻ると、熱烈な歓迎を受けた。

 厄介なスタンピード。

 災害のようなものであり、厄介な魔物の大量発生。

 それを迅速に片付けるのは、もはや我らがSランクパーティ【エクスポーション】の得意分野であった。



「おい、レオ! あそこの可愛い女の子達が、お前に手を振ってるぞ。羨ましいやつだ」


 金髪碧眼であり、俺の相方とも言えるアレンは、冷やかすようにそんなことを言う。


「やかましいし、あれはお前に向けてのものがほとんどだろうに……」


「残念ながら、女好きの浮気者は好かれない運命なのさ」


「噂は解消したくせに、よく言うよ」


 爽やかな甘いマスクを被る好青年のアレン。

 一見完璧な容姿と性格で、欠点などないように思える。

 しかし、そんな彼も、【エクスポーション】として、このパーティをSランクに持ち上げるまでは、多くの苦労を背負ってきた。


「……まさか、僕たちみたいな半端者が、こんなに陽の光を浴びることになるとはね」


「そうだな。最底辺からのスタートだったもんな」


 俺とアレンは、暗い過去を振り返るように思い出す。

 追放された俺と同様、アレンもまたあの男に拾われた経歴があった。

 ──おっさんには、感謝しかないな。


「さっ、早く帰んないと、リーダーに酒を飲み尽くされちゃうな」


 アレンの吹っ切れたような声を聞き、「ああ」と言葉を返す。


「今日は、たんまり報酬入るし、朝までフルコースの宴だな」


「お前はまた……知らないぞ、2日酔いになっても介抱してやらんからな」


「いやいや、レオは介抱してくれるさ」


「根拠は?」


「僕の相棒だからだ!」


 ──それは根拠とは言わないんだよ。

 などと内心ツッコミを入れながら、

「本当に馬鹿なやつ!」

 そうアレンに告げて、白い歯を見せ、満面の笑みを浮かべた。


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