第二話 : 第83回放送

「み、みなさんこんばんはー! あれ、こんにちはかな…。あ、いやなんでもないです。ショーコの恋バナで電波をジャック、のコーナーです!」


「前回は確かメンバーの紹介と恋のきっかけ、ぐらいでしたでしょうか」


「こ、今回はですね、恋愛バラエティにはつきもののある展開が待ってます。パチパチパチー! え、気になりません? 気になったら、最後まで聞いてくださいね。え、聞いてないですか? そんなこと言わないで聞いてくださいー!」


「出発から2週間ぐらいたった時、船のリビングとも言える中心の応接室でみんなでくつろいでいた時です」


「あの時以来、彼のことが気になって、その理由に自覚がない私は無意識にダンの方にチラチラと見てしまっていました。窓の方を見ているダン…。なぜだか気になる彼の横顔」


「そんな彼が突然『前方に何かある』と言ったんです」


「そうしたら、技士のマイクは『そんなわけはねえ。何かあれば船の探知機が教えてくれる』と言います。彼が言うには、その探知機が常に動いているから、何かあればそれに引っかかるはずだと」


「『じゃあ、見てみろよ』ダンが言うものですから、みんなで窓の方に向かいました。で、見ると、確かに何か小さな船のようなものが動かずにそこにあるんですね」


「それを見て、マイクは『おかしいな』と整備室の方に向かっていきました。何か船にあったんだろうか?と気になりつつ、窓の方を見続けていると、だんだんとその船が近づいてきます。よく見ると、おそらく一人用の船、のようで、プカプカと微動だにせず、浮いていました」


「それを見ていたダンが『少し様子がおかしい気がする。見てくる』と言い、部屋を出て行ってしまいました」


「その場に残った私とマイとリンは『なんだろうね?』と話しながら、そのまま三人でゆっくりお茶を飲んでいました。意外とみんなが集まることって少ないんですよね。みんなそれぞれの部屋で過ごすことも多いし。でも、こういう時の会話が共同生活をする上できっと重要なんだろうな、なんて思いながら話していました」


「で、しばらくガールズトークが弾み、マイが自分の大学時代の話をしていた時にですね。ドン、と音がして。扉が開きました。ダンが帰ってきたんです」


「見ると何やら人を背中に抱えているようで。そう、ここにきて新たなメンバーが参加ー!? みたいな。え、そうでもないですか? でも、服もボロボロで顔も真っ青な、今にも死にそうにぐったりしている人だったんですが。びっくりです」


「ダンが『だいぶ弱っているみたいだ』と言うものですから、マイが『急いで救護室まで運んで!』と、部屋に駆けていきました。さすが、医者です。対応が早いですよね。かっこいい」


「しばらくして、二人が出てきてマイが『大丈夫。ただの栄養失調みたい。リンちゃんも診てもらえる?』と言い、今度はリンが部屋に入って行きました」


「その様子を見ていて、私、二人は特技があっていいな、とつい心の中でこぼしてしまいました。慌ただしく動く二人を傍目に、私も何か協力できることはないかと探したんですが、素人の私だと邪魔になってしまうのが明白で…。あたふたとすることしかできませんでした」


「それと同時に彼が彼女たちと協力する姿にどこかモヤモヤした感情を覚えたのも、今となっては懐かしいです。あれが恋の嫉妬、というやつだったんですねー。きっと」


「一人で何もできずに立っているとダンが話しかけてくれて、『ショーコさんも彼の無事を祈ってやってくれ。な?』と声をかけてくれました。それを聞いて、私も私なりにできることをしよう、と思ってぎゅーと両手を握って、その場で祈っていました」


「その後、あっという間に夕食の時間になりまして。その日はリンが手を振るい、彼女特製の手料理が並びました。船員たちが手伝い、食堂のテーブルに黙々と運んでいきます。見るとニンジンやナスなど色んな野菜たちを使った、栄養たっぷりの野菜カレーでした」


「食堂にみんなが集まって座った頃、救助された彼が姿を見せました。無事、起きて来れたみたいです。横に座っていたリンが彼の名前はヨーデル、と言うのだと教えてくれました。見た目はだいぶ若い、10代かな…。救助した時はよく見えなかったんですが、今見ると、かなりのイケメンです。私の好みとはちょっと違うんですが…」


「そんな彼は何かを言いたそうにしていて、なかなか席に座りません。その時、ダンが席を立ち、彼の前に立って『まあ、まずはお腹空いただろう? 食べよう』と彼に優しい声を投げかけました。とても温かい目で。あの目…。今となっては冷たくなって、開くことはない目…。ははは。ふふ。今でもありありと思い出せます。思い出せる。また見たいなー。温かい、温かい。あの目」


「あ、あ、えと、そしてですね、ヨーデルもこくりと礼をして、席につき、そしてガツガツとカレーを平らげていきました。食べ物も食べれていなかったみたいです」


「リンはその様子を見て『よし、どんどん食べてね!』とおかわりを次々とよそって行きました。母性本能がくすぐられたんでしょうか。意外と二人、相性がいいのかもしれません。安心した私たちも、一緒に温かいカレーを食べていきました」


「で、食事の後ですね。私、ヨーデルの部屋に訪れようとしたんです。え、あ、いや別に気になったとかじゃないですよ! わ、私が好きなのはダンです! 決してイケメンだからとか、寂しそうな暗い様子がどこか刺激されたとか、そういうわけじゃなくてですね!」


「昼のマイとリンの様子をまた思い出して。私も自分でできることを何かできたらと。そう思っていたんです」


「だから彼にお茶でも入れてあげようと思ったんです。私もよく飲む、カモミールティー。緊張を和らげるリラックス効果がある優しいお茶。突然見慣れない船に乗って、知らない人に囲まれてしまって、きっと緊張とストレスを感じてるだろうなって。私も、その気持ちはわからないでもないから」


「で、ですね。ヨーデルの部屋の方に向かう最中、どうも廊下がおかしくてですね、何度も電気が消えるんです。チカチカと。何かおかしいなと思いながら私はお茶を運んでいったんです」


「そして、彼の部屋の前についた時、ドアから声が聞こえてきたんですね」


「小さな声で『早く伝えなきゃ…早く伝えなきゃ…』なんて声が。その時の私はなんのことだろうと思って。でもその真剣な話ぶりから、私、怖くなってしまって、その日は引き返してしまったんです」


「あ、ということで、今回はメンバーも増えて今後はどうなるんだろう、と言うところで次回の放送に持ち越します! それではお楽しみに!」

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