一人の少女の物語
「神である私やお姉様を超える――
「っ!?」
女神ヘカテイアの口から放たれた言葉に、僕は息を呑んだ。
「うふふ……七年前の
その姿は、女神ヘカテイアを崇める教団の連中と同じだった。
……この女は、僕が
「ギ、ギル……これは一体、何がどうなっているのですか……? 目の前にいるソフィアが女神ヘカテイアで、どうしてギルにあのような眼差しを向けているのですか……?」
「…………………………」
不安に押しつぶされたような顔で、縋るように尋ねるシア。
そんな彼女に、僕は答える
「あなた様の存在を知り、私は今までバルディリアの民に向けていたその力を、全てあなた様の
そうか……女神ヘカテイアは、本来バルディリアの者達に向ける力を、全て僕と接触するために投入したのか。
「うふふ! 本来なら、創造主様……いえ、ギルバート様はこのソフィアと結ばれ、あなた様の隣にいる憎むべき女に排除される運命。なら、この私が
「…………………………」
「ですので私は、本来の
女神ヘカテイアは
「ですが……うふふ、シェイマは全て自分の意思でソフィアを
地面に転がるシェイマ=イェルリカヤを見やりながら、女神ヘカテイアがケタケタと愉快そうに
だが。
「なのにこの馬鹿は、私が
その表情を怒りの表情へと変え、シェイマ=イェルリカヤを忌々しげに睨んだ。
「といっても……うふふ、王室から受けた不利益の数々は、ギルバート様の策だったのですが。おかげで私も焦ってしまいました……」
そう言って、女神ヘカテイアはクスリ、と微笑んだ。
「さて……これでギルバート様も、あなた様の隣に相応しいのはそこな
「……一つ聞きたい。たった今告げた『
僕は疑問に思ったことを、低い声で尋ねた。
小説では、
この女が『傷女』と呼ぶのは、本来はあり得ないはず。
「うふふ、やはり疑問に思われましたか。それについては、この私も分かりません」
「分からない?」
「はい。ソフィアの中で目覚めた瞬間、どういうわけかこの女の人格の一部が、私という存在と混ざり合ってしまったようなのです。ひょっとしたら、
そんな説明を受け、僕は思わず顔をしかめた。
はっきり言って、僕からすればただの迷惑だ。
「さあ、もうよろしいでしょう? あなた様にその
左胸に手を添えながら、自信に満ちた瞳で僕を見つめる女神ヘカテイア。
だけど、この女は盛大に勘違いをしている。
「はは……馬鹿だなあ」
「? 馬鹿、とは……?」
クスリ、と笑った僕の言葉を聞き、女神ヘカテイアが訝しげな表情で尋ねる。
「
だって。
「この世界は……この物語は、僕がただ一人愛する、“フェリシア=プレイステッド”の物語なんだから」
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