ソフィア=ヘカテイア
「うふふ、ごきげんよう……お姉様、そして……
突如として僕達の目の前に現れたソフィアが、シェイマ=イェルリカヤの腹から腕を引き抜き、優雅にカーテシーをした。
その腕や身体に付着した鮮血など、気にも留めずに。
「ソフィア……どうしてここに?」
「どうしてって、ご挨拶ですねお姉様。もちろん私の世界よりも大切な、ギルバート=オブ=ブルックスバンク様に汚い手で触ろうとする輩を排除するためです」
そう言うと、さも当然とばかりにソフィアがクスクスと笑った。
「そん……な……私達は……私は、こんなにも
「面白いことを言うわね。この私が、いつそんなことを頼んだというの? それに」
ソフィアは僕とシアを交互に見やった後、眉根を寄せながら虫の息のシェイマ=イェルリカヤを睨んだ。
「あんなオモチャまで用意して私の大切な御方を傷つけようなどと……あなたには、死すらも生温いわ」
「へ……ひきょっ!?」
ソフィアが右腕を突き出して手を握る仕草をしたかと思うと、シェイマ=イェルリカヤの頭部が突然十分の一以下に圧縮されてしまった。
そして。
「……この馬鹿が申し訳ございません。ギルバート様、どうかお許しくださいませ」
神妙な面持ちで、ソフィアが恭しく一礼した。
その表情に、態度に、声色に、僕は思わず面食らってしまう。
「ソフィア……あなた、何を考えているの? どうしてそんなにも、
僕の身体を抱きしめながら、シアが尋ねる。
その声に、僅かな不安を乗せて。
「決まっています。ギルバート様こそ、私が愛するたった一人の御方だからです」
「「っ!?」」
エメラルドの瞳にその純粋な想いを乗せ、一心に僕を見つめるソフィア。
だが、本当にどうしたっていうんだ!?
少なくともソフィア=プレイステッドという女は、誰よりも利己的で、冷徹で、誰に対しても愛情を見せることのない設定のはずなのに。
それは今までの関わりでも、そんな行動を見せていたというのに。
「な、何を馬鹿なことを言っているの! ギルは私の……
泣きそうな表情で、大声で僕に尋ねるシア。
ええ……そのとおりですよ、シア。
僕は、あなただけの夫なのです。
だからこそ、あなたと二人きりで永遠を誓ったのですから。
「シアの言うとおりだ。僕達の間には、誰一人として入ることはできないんだ」
「ギル……ギル……ッ!」
突き放すようにソフィアに冷たく告げると、とうとう
そんな彼女を、僕は優しく抱きしめる。
なのに。
「うふふ……ギルバート様の御心は、私の想いを知ればどちらを大切にすべきかお分かりになられます。だって……私とギルバート様こそが、真に結ばれるべき二人なのですから」
まるでそうであると確信しているかのように、ソフィアは笑顔で言い放つ。
「それはあり得ない。何故なら僕とシアは永遠の愛を誓い合い、正真正銘の夫婦となったのだから」
そんなソフィアの言葉を全否定するため、僕はまだ誰にも告げていなかった事実を告げる。
そうだ……僕は、ソフィアのあのエメラルドの瞳からすらも抗える絆を結んだんだ。
この、誰よりも愛するシアと。
「……どういうこと、ですか……?」
それだけショックを受けたからだろうか。
先程までの様子とは打って変わり、虚ろな瞳をしたソフィアが力ない声で尋ねる。
「言ったとおりの意味だよ。僕とシアは、女神ディアナの前で結婚したんだ」
「そうです! 私はギルと、永遠の愛を誓ったんです! 共に人生を歩む、夫婦として!」
僕とシアは、ソフィアにもう一度事実であると告げた。
シアに至っては、絶対に僕から離れない、離さないとばかりに力一杯抱きしめながら。
「う、うふふ……こんな
声にならない声で
その桜色の唇から、鮮血が流れる。
「……そうか」
「「……?」」
「こんな女が……
「っ!? ま、待て、ソフィア!?」
ソフィアの放った言葉に、僕は思わず声を荒げた。
今、コイツは僕のことを
「大丈夫です。この私が、その
そう叫んだ瞬間、ソフィアの瞳がエメラルドから変化し、ルビーのように紅く輝いた。
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