拾い集めた真実

 すぐに話し始めると思ったけれど、アケチは一度聖来を見て、次に蓮くんを見た。


「水町にはちょっとつらい話かもしれないが、そのフォローは蓮に任せる」


 訳が分からず首をかしげた聖来だったけれど、蓮くんは力強く頷いた。

 

 私も意味が分からず首を捻っていると、アケチがまた私の頭をクシャっと撫でてニコッと笑った。


 再び心臓が跳ね上がる。っちょっと、それやめてよって言おうとしたけれど、そんなに嫌じゃない自分がいた。こうやってアケチに頭を撫でられると、何故か安心するんだよね。


 アケチは深呼吸をすると、ゆっくりと口を開いた。


「部長さんは自分の才能に限界を感じていた。前回のコンクールで優秀賞を受賞した部長さんは、あの絵以上のものを描かなければいけないというプレッシャーに押しつぶされてしまった。そこへ水町という新たな才能を目の当たりにして、余計に絵が描けなくなってしまった。でも、次はどんな絵を描くんだろうという周りの期待から筆を休めることもできなくなった。部長さんは水町の絵に嫉妬しつつも、次第に水町の描く絵に惹かれていった」


 アケチが聖来を気にかけたのはこの事だった。部長さんが自分のせいで今回の事件を引き起こしたと知れば、聖来は傷つく。


 聖来が傷つく必要なんて、これっぽちもないけれど、やっぱり聖来は自分を責めている。


 大きな瞳からポロポロと涙がこぼれている。


 でも、震える聖来の肩を蓮くんがしっかり支えている。だから、聖来は大丈夫。


 アケチの話は続く。


「惹かれるあまり水町が描く絵を真似ていることに気付いたのは、コンクールの絵を出展する一週間前。でも、今から新しい絵なんて描けないし、前回賞をとった自分が出展しないわけにもいかないと勝手に思い込んだ部長さんは、真似た絵だと気付かれないように細工したうえで、自分が描いた絵を隠すことにした。そうすれば出展しなくてすむと考えたんでしょうけれど、ここで誤算が生じた。それが、谷口先輩」


「……私?」


 谷口先輩は目を見開いてアケチを見た。


 アケチは優しく微笑み返すと、話を続ける。


「谷口先輩は部長さんのことをずっと見ていたから、部長さんが水町の絵に心酔していくことが許せなかった。でも、部長さんの一番のファンである谷口先輩は、部長さんの絵がなくなったと聞いて、一生懸命に絵を探した。それは部長さんにとって予想外の出来事でした。誰も自分の絵など真剣に探さないだろうと思っていた部長さんは、躍起になって絵を探す谷口先輩を放っておけなくなってしまい、自分で隠した絵を自分も探さなくてはならなくなった。でも、ある程度探して見つからないから仕方ないという流れにもっていこうとしていたところ、僕たちが現れた。そして、見つけてほしくない絵を見つけてしまった」


 部長さんは項垂れたようにずっと下を向いている。そんな部長さんを谷口先輩は慈しむように見つめている。うすうす感じていたけれど、谷口先輩は部長さんの事が本当に好きなんだな。


 アケチの話は終わらない。


「そして、最悪なことに出展したくもない絵を出展することになってしまい焦った部長さんは、強硬手段にでました。部長さんはまず画用紙に色を塗り、ダミーの絵を用意しました。そしてそれを切り刻み音楽室のゴミ箱を使って通気窓から投げ込んだ。それからご丁寧に出入口のところにカッターを置いて、誰か通りかかるまでジッと待った」


 アケチの話に、広瀬先輩が待ったをかけた。


「宅配業者が来るまでに、誰も通りかからなかったらどうするつもりだったんだ?」


 広瀬先輩の疑問に思うのは当然。でも、部長さんはただ闇雲に『誰か』を待っていたわけじゃなかった。


 絵を梱包した帰りに誰かの視線を感じたのは、あれはきっと部長さん。


 部長さんは蓮くんが、朝美術室に来ることを知っていて待っていた。蓮くんを犯人にするために。


「『誰か』と言ったけれど、実際には部長さんは蓮が美術室に来るのを知っていましたよね」


 確認するようにアケチが聞いたけれど、部長さんは何も答えなかった。


「部長さんは前日、僕たちの話を聞いて、蓮がじんくんを連れ戻しに来ることを知っていました。そして、何も知らずに蓮は、きちんとじんくんを連れ戻しに美術室に来て、落ちていたカッターを拾ったところで、部長さんが現れた。美術室の中には部長さんがばらまいたダミーの絵があります。誰が見てもカッターを持っている蓮が犯人だと思います。運よく広瀬先輩まで居合わせ、蓮を犯人に仕立て上げることに成功したわけです」


 まさか自分が犯人の手助けをしていたなんて思っていなかった広瀬先輩は、自嘲気味に笑った。


「ボクもまんまと井原の作戦に手を貸していたとはな……。でも、伊原は美術室には入っていない。いつ絵を切り刻んだんだ? 彼を見つけた時はまだカギがかかっていたはずだ」


「先生を呼びに行ったのは、部長さんではないですか?」


 アケチに聞かれて、驚いたようにうなずく広瀬先輩。


「そうだけど……」


「普段美術室はカギがかかっていないということなので、顧問の野村先生は部長さんから話を聞いてすぐさま職員室を飛び出したと思います。その時に部長さんは何食わぬ顔でカギを持って美術室へ向かった。そして、どさくさに紛れ蓮のポケットにカギが入っていたと宣言したのです。そして、野村先生と広瀬先輩とで蓮を職員室へ連行した。部長さんは……そうですね。この事をみんなに知らせるとでも言って別行動をとった」


 まるで見ていたのかのように話すアケチの話に、広瀬先輩は言葉なくうんうんと頷いた。


「ひとり残った部長さんはカギを開け、美術室に入り絵を切り裂こうとした。でも、そこにカッターがなかった。谷口先輩、あなたが隠したんですよね」


 聞かれたけど、谷口先輩は俯くだけで何も答えなかった。


「谷口先輩は部長さんの様子がおかしい事に気付いたんです。絵を隠したのも部長さんだと気付き、部長さんが自分の絵をダメにしてしまうんじゃないかと思った谷口先輩は、美術室にあった刃物をすべて隠したんです。でも、部長さんの執念の方が強かった。刃物が見つからず、部長さんは仕方なく素手で破いていったんです」


 そうか、だから切り口が違う絵の破片が出来た。そして、部長さんの手があんなに赤く腫れていたのもそのせいだったんだ。


「いつ誰が来るかとヒヤヒヤしながら犯行を行っていた部長さんは、自分がダミーの絵をバラまくのに開けた通気窓のカギは閉めることは忘れませんでしたが、台にした机を片付けるのを忘れました」


 あ、だから不自然に壁にくっついた机が置いてあったんだ。


「そして、これがダミーをバラまいた後にカギを閉めたという証拠です」


 そう言うと、アケチは一枚の写真を見せた。


 その写真は壁にぴったりとくっつけられた机の脚の下に、ダミーの絵が踏まれている写真だった。それは、絵をバラまいた後に置かれたものだと雄弁に語っている。


「通気窓のカギは美術室に入って最初に閉めたのでしょう。机の脚に踏まれているのがダミーの絵だけでした。きっとじんくんを倒したのはそのすぐ後ですね。だから机を片付けるのを忘れてしまったんです。胃が見つからないことに気を取られたのでしょう。そして、本来なら自分の絵だけを切り刻めばよかったのですが、送り状をいちいち確認している時間がなかったというのもありますが、すべての絵を切り刻んだ方が蓮を犯人に仕立て上げやすかったからでしょうか。すべての作業を成し終えるとカギをかけた」


 話し終えると、美術室は一瞬シンと静まりかえった。


「いつ俺が犯人だって気付いた?」


 ようやく部長さんが口を開いた。


 部長さんは何ひとつ反論しようとせず、それだけアケチに尋ねた。


「部長さんは自分が描いた絵の事を一切口にしなかったので、もしかしてそうかなとぁ~とは思っていましたが、決め手は僕が絵は乾いていたか聞いた時、まだ乾いていなかったにも拘わらす絵のことを心配していなかったからです」


「それのどこが決め手なんだ?」


 意味が分からないというように部長さんが首をひねった。


 確かに、それのどこが決め手なのか私にもさっぱりわからない。


「なるほどね、それが穴か」


 そう答えたのは広瀬先輩だった。


「そうです。絵を大切にしているからこそ、ですね」


 アケチと広瀬先輩で分かりあっているみたいだけれど、ほかのメンバーはしっかり乗り遅れています。


 乗り遅れまいと一生懸命走ってきたのに、目の前でドアが閉まった時のような悔しさが込み上げてくる。


「本当に絵のことが心配だったら、絵が汚れていないかを心配したはずです。だって、絵はまだ乾いていなかったんですから。コンクールに出展する絵ですよ。その絵が万が一汚れていたら、見つかったとしても出展できなくなってしまいますからね。でも、部長さんは全く心配していませんでした」


「そっか、谷口先輩は部長さんが『絵はまだ乾いていなかった』ってこと聞いていたんですね。だから、あんなに躍起になって部長さんの絵を探していたんだ」


 そう言った私に、アケチはうなずいて見せた。


 そういえば、無事でよかったですねっていってたっけ。


「でも、部長さんは全然、絵の心配をしていなかった」


 なるほど、とみんなは納得したけど、部長さんだけはがっくりとうなだれた。


「たったそれだけのことで……」


 部長さんは自分の愚かしさを笑うように、ハハッと乾いた笑いを漏らした。


「俺は君を侮っていたようだ。君みたいな間抜けになんてバレやしないってね」


 部長さん? その言葉、ディスってんのか褒めてんのかいまいち分かりません。


 でも、アケチは本当にすごい子なんです。


 やればできる子なんですよ。あんまり、そうみられないのが残念ですが……。


「絵を描くことがこんなに苦痛に思ったことはなかった。今まで思いのままに描いてきたのに、何も思い描くことが出来なかった。筆を持っても何も……何一つ描けなかった。それが怖かった。もう二度と絵が描けないんじゃないかって……。あんなに絵を描くことが楽しかったのに、賞をもらったら世界が一変した。俺はプレッシャーに負けたんだ。そんな時水町さんの絵を見た。とても敵わないって思った。俺にはあんな絵は描けない。悔しくて、でも楽しそうに描く水町さんの絵から目が離せなくなって、気付いたら、水町さんが描く絵を模写していた。こんなの出展できない。いくら細工を施しても類似点が多すぎて……。それからのことはよく覚えていない。とにかくその絵を消してしまいたかった……。でも、絵は送られてしまった。もしかしたら、水町さんに迷惑をかけるかもしれない」


 部長さんはダムが決壊したかのように、一気に言葉を吐きだした。


 そして、ひとつだけ分かったことがあった。


 部長さんは決して自分の事だけを考えて、今回の事件を犯したわけじゃなかった。


 きっと聖来の事を気にかけていたんだと思う。


 今回出展するコンクールは、前回部長さんが優秀賞をとったことのあるコンクール。そこへ類似点の多い絵が送られてくれば、聖来が模写した側だと疑われかねない。部長さんは聖来が責められはしないかと心配しているみたいだった。


「それならご心配にはおよびませんよ」


 アケチがあっけらかんと言い放った。


 その言葉に、部長さんがポカンと口を開けてアケチの顔を見た。


「ど、どういうことだ?」


「部長さんの絵は送っていません、そうですよね? 広瀬先輩?」


 え?


 みんなが一斉に広瀬先輩をみた。


「君は……全部わかっていたんだね」


 少しがっかりしたような、それでいて少し嬉しそうな複雑な表情をした広瀬先輩。


「伊原の絵だけは送っていない。それでよかったんだよな?」


 確認するように尋ねると、部長さんが心底安心したようにうなずいた。


 し、知らなかった。


 どういうことだろうと不思議に思っていると、アケチが説明してくれた。


「広瀬先輩は部長さんが描けなくなっていたことに気づいていましたよね。そして、水町の絵を真似した事にも気づいた。広瀬先輩が部長さんの絵を見た時にとても驚いた顔をしていたし、『犯人は絵を送りたくない』と言いました。その時、広瀬先輩は犯人が部長さんだと気付いていると確信しました。そして、きっと僕と同じ手法で部長さんの絵だけをすり替えた」


 ああ、私もアケチと同じ材料を握っていたのに、まったく気づかなかった。


 まだまだ修行が足りないな……。こんなんだから、いつまでも助手なんだろうな。


 でも、負けないぞ! いつか必ずアケチよりも先に名探偵になる!


「そうか……それなら、よかった……」


部長さんはそう呟くと、聖来に向き直ると頭を下げた。


「水町さん……スケッチブックを捨てたのは俺だ……俺には描けないような絵を簡単に描いている水町さんを見ていたら悔しくて……ゴメン」


 頭を下げた部長に、聖来はブルブルと首を振った。


「私……部長の絵……好きです。透明感があってすごく繊細で……だから、絵を描くの、やめないでください」


 部長さんは驚いたのか、目を大きく見開いて聖来の顔を見た。


「……ゆるして……くれるのか?」


「実は私、谷口先輩と一緒で、部長さんの絵のファンなんです」


 そう言って聖来はニッコリ笑った。谷口先輩は、ちょっとばつが悪そう。


 次に、蓮くんの顔を見て深々と頭を下げた。


「君を犯人にしてしまって悪かった」


「そんなことどうでもいいんです。俺が一番気になっているのは、聖来のスケッチブックには何が描いてあったか、なんです。教えてくれたら許してあげます」


 蓮くんはさわやかにそう言ったけれど、蓮くんの隣で聖来が怖い顔して部長さんを睨みつけていた。


「部長、スケッチブックの中身を誰かに言ったら、市中引き回しの上、打ち首、獄門ですよ」


 その言葉、冗談に聞こえないからホント怖い。


「分かった。これは他言無用だ。悪いが教えてやることはできない。俺の事は一生恨んでくれて構わない」


 ええええええ? バッサリ捨てられた蓮くん。


 でも、聖来と蓮くんはもうくっついたんだから、別に知られてもいいんじゃないかなって思っていたら、私の頭の中が見えるのか、聖来がジロリと私を睨みつけた。


 誰にも言いませんよ! 絶対墓まで持っていきます。


敬礼する私を、アケチがクスっと笑った。


「あの……」


 部長さんが遠慮がちに、私に声をかけてきた。そしたら、アケチが突然部長さんを殴った。


 一瞬何が起こったのか分からず、呆然と立ち尽くしていた。


「ちょっとっ! 何するのよ!」


 アケチに殴られ、倒れた部長さんに駆け寄った谷口先輩の叫び声で、ハッと我に返った。


「何やってるのよアケチ!」


 部長さんを殴ったアケチの手が震えていた。


 そう言えばアケチが誰かを殴ったのは、あの時以来だっけ。


 私の宝物を隠した男の子を殴ったのが一番最初。そして、今度が二度目だ。


「僕は莉子を傷つけた奴は誰であろうと、どんな理由があろうと許さない!」


 そう、アケチはいつだって私のために……。


「だから……、だから莉子を傷つけた僕の事も殴れ!」


 アケチはまっすぐに部長さんを見つめてそう言った。


 は? 何言ってんの? よくわからないんだけど……。


「どうして君を殴る必要があるんだ?」


 部長さんが首をかしげた。


 そうだよ。どうしてアケチが殴られなきゃならないの?


 アケチはいつだって私に優しくしてくれた。時々頭にくることも言うけれど、アケチはいつだって私が嫌がることはしない。


 いつだって傍に居て守ってくれているじゃない。


 僕を殴れと言い張るアケチに、広瀬先輩がやれやれとばかりに肩をすくめた。


「女の子を傷つけた行為はボクも許せないから、伊原を殴ったアケチくんの気持ちも分かるし正当性も認めるけれど、だからといって、殴り返せと言われても伊原は殴り返せないだろうね」


 確かにそうだろうね。


 罪を暴かれた今、部長さんはすごく反省しているし、後悔もしているだろうから、ここでアケチに殴れと言われて、はいそうですかって出来るわけがない。


「でもそれじゃあ、僕の気がおさまらない」


 そんな事言われても……。


 ほら、部長さん困ってるし……、何故か広瀬先輩は笑いを堪えてるし……。


 アケチもこのままでは気が治まらないだろうし……。


「じゃあ、部長さんはずっと絵を描き続けるというのはどうでしょう。私も部長さんの絵、とっても素敵だと思います。今の部長さんにはわりと酷なことだと思いますけど、ねえ、広瀬先輩? アケチもそれでいいでしょ?」


 私がそう聞くと、アケチはふてくされたまんまだけど、広瀬先輩はあからさまに嫌な顔をした。


「それは思った以上に地獄だな」


 そう言うと広瀬先輩はハハッと笑って、部長さんに手を伸ばした。


「自分の才能は自分で決めるんものじゃないみたいだ。素敵だと一人でも言ってくれる人がいるのは、すごく幸せなことだな」


 部長さんは広瀬先輩の手を借りて起き上がると、チラッとアケチの顔を見た。


「俺は、アケチくんよりも彼女の方が脅威に感じていた。絵を見つけたのも彼女だったしね。いつバレるかヒヤヒヤしていて……、だからって階段から突き落とすなんて、人として絶対にいけないことだってわかっている。だから、警察なりなんなり俺を突き出してくれて構わない」


 すると、アケチはふてくされながらも、部長さんの言葉に首を振った。


「そんなことをしたいなんて莉子は思っていませんよ。僕もそこまでしたいわけじゃない。ただ……僕がもっと早くこの事件を終わりにしていれば、誰も傷つかずにすんだのに……って」


 アケチはすごく悔しそうに、手をギュッと握っている。


 そうだ。あの時、おばさんが教えてくれた。


 私の宝物を隠した男の子を最初に殴ったのはアケチだった。でも、その後、アケチは自分の事も殴れって言ったみたい。気づけなかった自分がキライって……。


 アケチは昔から何も変わっていないのね。


『自分がもっと早く気付いていれば、莉子が泣かなくてすんだのにって』


 フフフ……。思わず笑ってしまった。


「アケチ、事件が起きる前に、事件を解決する探偵にでもなるつもり?」


「それは名案だ。そうすれば誰も傷つかない」


 アケチが私の言葉を真に受けるたのを見て、広瀬先輩がハハッと笑った。


「卵が先か鶏が先か……みたいな、哲学的な話だな。アケチくんらしい」


その場に笑いが漏れた。


「ねぇ、これでこの事件はおしまい、だよね?」


 アケチの顔を覗くと、ちょっぴり不服そうだったけれど、大きく頷いた。


「じゃあ、アケチ。美味しいプリンでも食べに行こうよ」


 そう提案した私に、アケチがニヤリと笑みを浮かべた。


「莉子のおごりならいいぞ」


 え~! ま、今回は名探偵くんのおかげで事件も解決したことですし、良しとしますか。


「家に美味しいプリンがあるの」


「それ、もともと僕んちのだぞ」


 そう言うと、アケチは私の頭をクシャと撫でた。


 その後、絵は無事にコンクールに出展できたし、美術部員たちは部長さんの苦悩が他人ごとではないのか、誰も部長さんを責める人はいなかった。


 でも、部長さんは自分の気が済まなかったのか、自ら先生に名乗り出て停学処分を受けることとなった。

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