1月18日


ポン、ポン、ポン、ポーン

カシュッ

ゴクゴクゴクッ


「あ゛ー。sveidラジオ!」


「みんなー、オッハー。パーソナリティーの悠衣でーす」

「通勤お疲れ様です。お仕事頑張りましょう。詩です」

「お前らの通勤に絶望を添える朝から飲酒ラジオ。sveidラジオ! の時間がやってきました」

「そろそろ生リスナーが欲しいころね」

「姐さんが顔出してくれりゃ、一発なんじゃね?」

「さ、今日も頑張りましょうか」

「頑張るも何も、テキトーにしゃべるだけだがなー」

「今日のオープニングメール。ラジオネーム、ヒレカツ奉行さんから。いつもありがとねー。えーっと。風邪をひきました。寂しいです」

「風邪かよ」

「コロナじゃない? 大丈夫?」

「聞いてもどうせラジオは聞きに来ねえんだから意味ねえって」

「そうは言っても」

「私はここ数年風邪ひいてねえからなー」

「バカは風邪ひかないってね」

「姉さんは最近風邪は?」

「全然ひいてないわね。大学生のころにあったかしら」

「姐さんも立派なバ」

「風邪の時はね!」

「話そらしやがったな」

「風邪の時はね、とにかく暖かくして、カロリーあるもの食べて、寝てなさい。解熱剤は使いすぎないこと。寝れないなら睡眠導入剤もありよ」

「めっちゃ真面目に喋るじゃん」

「キャラ云々の前に、医療人だから。医者ではないけどね。あ、あとたくさん水分とって。もし口内炎とかできて辛かったらビタミン剤飲むのもアリよ」

「なんか、本物っぽいな」

「一応本物なのよ。かかりつけのお医者さんがあればちゃんと行くのよ? 素人が勝手に、どうせ大したことないからって決めつけるのが一番駄目よ。ただの風邪ですねって、お医者さんに言ってもらいなさい。と、まあ、こんだけ言っておけば大丈夫でしょ」

「姐さんそういうところあるけどさ」

「なによ」

「メールの最後に寂しいですって書いてあるんだから、どうするかとかどうでもよくて、優しい一言をかけてほしいんだよ」

「そんな一言で風邪が治るなら医者も薬もいらないわ」

「冷めてんなー」

「なによ。あんたが言ってあげればいいじゃない。役割分担よ」

「わたしは、お前のことなんて知らん! 勝手に早く治せ! って言い放つタイプじゃん?」

「まあ、変にあんたに心配されるほうがキモいわね」

「だろー。だから、姐さん。求められてるし、時間もねえから」

「別に時間はまだいいけど。はあ。えっと。ヒレカツさん。プッ」

「おい、失礼な奴だなー」

「ヒレカツに、さんまでつけて優しく語りかけてるの、想像したら滑稽だなって」

「はあ?」

「ヒレカツ定食を目の前にして、語り掛けてる姿を想像しちゃって」

「それ言っちまうと、私も次からそうとしか見えなくなってくるからやめてくれ」

「はあ、はあ。まずいわ。ツボっちゃって言えないやつだわ」

「早く。テイク2」

「んんっ。よしっ。ヒ、ヒレカ、プッ!」

「あー、もうダメだ。ヒレカツ、許してやってくれ」

「ご、ごめんね。悪気はないのよ。心配はしてるんだから」

「だそうだ。もう今日の姐さんは使い物にならねえから、私が締めるぞ」

「よろしく」

「えっとー、まずは宣伝か。この前の日曜日にfripSideの『magicaride』をカバーしたぞ。絶対聞け。1人100回再生がノルマだ!」

「大変なノルマねえ。あんたも当然聞くんでしょ?」

「めんどくさいからパス。次! メール送ってこい! なんでもいいぞ。NGなしだからな。あとかわいい女の子からの連絡も大募集だ!」

「いまのところヒレカツさんしか、プッ!」

「無理にしゃべるからー。ヒレカツ以外からのメールも待ってるぞ」

「で、今日の1句は」

「これを」

「はいはい。えっとー、は、なんて読むんだよこれ」

「ひきめりょうう」

「はいはい。蟇目ひきめ良雨りょううのやつ。花街はなまちに抜け道ありぬ冬、あ?」

「すみれ」

冬菫ふゆすみれ

「もう一回読んで」

「なんでだよ」

「そういうものだからよ。ちなみに、花街っていうのは昔の風俗街のことよ」

「へー。行きてえな」

「風俗街って女でも入れるお店あるのかしらね」

「知らねえけど。調べといて」

「私仕事なんだけど」

「じゃ、また明日なー」

「はあ。いってきまーす」

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