1月16日


ポン、ポン、ポン、ポーン

カシュッ

ゴクゴクゴクッ


「あ゛ー。sveidラジオ!」


「みんなー、オッハー。パーソナリティーの悠衣でーす」

「通勤お疲れ様です。お仕事頑張りましょう。詩です」

「お前らの通勤に絶望を添える朝から飲酒ラジオ。sveidラジオ! の時間がやってきました」

「また月曜日が始まってしまったわ」

「ま、私は毎日が日曜日だけどな」

「うらやましい限りね。というよりもよ。じゃんけんは?」

「じゃんけん?」

「下着の色の発表をかけたじゃんけん」

「あー、あったなー。え、何、姐さん。言いたいの?」

「そんなわけないじゃない。アンタが前言ってたんでしょ。小さい約束こそ守るって」

「そこまで言うならやろうか?」

「当たり前でしょ。じゃんけんぽん!」

「おー。姐さん、じゃんけん弱すぎね」

「はあ。1回くらいアンタの下着を、画面に見せつけてやりたいんだけどね。何回負けることになるか分かったもんじゃないわね」

「御託はいいから早くしな」

「はいはい。えっと。上は濃い目の赤。下はちょっとピンク系」

「そろそろ姐さんの秘密も暴いていきたいよね」

「秘密って何よ」

「言ってもいいなら言うよ」

「いや、ミステリアスに行きましょう」

「そんなことよりもだよ。昨日動画投稿したぞ」

「最近本職が何かわかんなくなってたわ。バンドマンだったわね、私たち」

「私たちが初めて歌ってる姿を投稿だ。お前ら当然見たよな?」

「誰に向かって言ってるのよ」

「将来のファンたち」

「いい心がけではあるのかしらね」

「あれ苦労したんだぞ、お前ら」

「仕方ないじゃない。顔出しNGが条件なんだから」

「いいアイデアだったろ。煙草のパッケージで顔隠すって」

「私はあんま動かないからいいけどさ」

「問題は花純なんだよな。あいつ、いつもまったりしてるくせに、ベース持ったら暴れまわるからな」

「あれで顔出しNGなんだからたまったもんじゃないわよね」

「結局顔隠そうと思うと、あいつのところだけ目一杯画像が居やがるから。一見なんの動画かわからんね」

「JTがスポンサーになってるみたいよね。あ、詳しくは動画をチェック。概要欄にリンクあるし、チャンネルページに行ってもわかると思うわよ」

「ナイス宣伝」

「ナイスというか、このためのラジオでしょ」

「忘れてたぜ」

「本末転倒もいいところね」

「姐さんはそもそもなんで顔出し嫌なん」

「は? 当たり前でしょ。逆になんでアンタは顔出してもいいのよ」

「可愛いから?」

「はあ」

「メロメロなくせに」

「メロメロかはわかんないけど」

「さ、今日のメールだぜ。また、ヒレカツ奉行から。部屋が汚すぎて、めっちゃでかい黒とオレンジのミミズみたいなのが出ました。と思ったら、おしゃれな紙袋の持ち手でした」

「どういうこと?」

「紙袋の取っ手がミミズに見えたんだろ」

「いや、そう書いてあるけども。え、部屋が汚すぎて?」

「部屋が汚ければなんでも湧く可能性があるってことだろ。毒をもったミミズも生まれるかもって」

「そう思うレベルの部屋ってどういうことよ」

「私に聞かれても書いてあることしか知らねえし。おい、ヒカレツ。詳細送れ。あとお前、ちゃんと朝の配信に来い。後からアーカイブで見てんじゃねえぞ」

「どうする? アーカイブも見てなかったら」

「よし、それも報告しろ。見てなかったらお前の家を見つけ出して性的にいじめてやる」

「期待しないほうがいいわよ。こいつの性的なイジメはほんとにたち悪いから」

「なんだよ。いつもあんなに嬉しそうに喘いでくれるくせに。もうしてやんねえぞ」

「あー、それは困るわねー」

「みんな。姐さんな。信じられんくらいドMだから、いつもクールに決めてるくせに、エッチの時すげえんだからな。超甘えてくるんだからな」

「そのあたりが本当かどうかも含めて、ミステリアスってことで」

「じゃあそろそろ締めるぞ」

「はいはい。宣伝。昨日ついにカバー曲を投稿したわ。頑張って練習したからぜひ聞いてね」

「絶対聞けよ」

「あと、メールフォームあります。概要欄のリンクからどうぞ」

「ヒレカツ。メールかけよ。あと、私と遊んでくれる女の子募集中だ。何でもいいから連絡くれ。最後に姐さんの授業だ」

「授業というか今日の1句ね。平子ひらこ公一こういちの1句。裸木はだかぎや落日はしゅをひとしぼり。しゅって、朱肉の朱ね。裸木や落日は朱をひとしぼり」

「また明日ー」

「はあ。行ってきます」

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