1月10日


ポン、ポン、ポン、ポーン

カシュッ

ゴクゴクゴクッ


「あ゛ー。sveidラジオ!」


「みんなー、オッハー。パーソナリティーの悠衣でーす」

「通勤お疲れ様です。お仕事頑張りましょう。詩です」

「お前らの通勤に絶望を添える朝から飲酒ラジオ。sveidラジオ! の時間がやってきました」

「前回言い忘れてたんだけど、週末は伊勢神宮に行ってました」

「ほんとにな。そういう大事なこと言い忘れるのはラジオパーソナリティとしてどうかと思うぞ」

「あんたに言われたくはないけどね。3年前から三が日を外して伊勢神宮に参るようにしたのよ」

「わざわざ何時間もかけて何しに行くんだよ」

「参拝よ」

「意味わかんねーんだよな。その辺の神社でいいじゃんかよ」

「地元の神社にも参るわよ」

「分っかんねー」

「あんたにわかってもらう必要ないからいいわよ。そういえば花純も、新年に伊勢に行きたいって言ってたわよ」

「は? あんな物欲まみれのくせにか」

「12月31日から1月1日にかけてパチンコが開いてるんですって」

「なんだそれ」

「普通は風営法の問題で、夜12時には閉まるんだけど。伊勢神宮の関係で三重県ではオールナイトできるらしいわ」

「何がうれしいんだよ」

「打ちながら年越しができるのがいいんじゃないの? 私だって知らないわよ」

「やっぱ欲にまみれてやがったな」

「曰く、負けると分かってても打たなきゃいけない瞬間がある。ですって」

「じゃあやめろや」

「アンタらって初詣って行かないわよね」

「神頼みするくらいなら遊ぶ」

「努力するとかそういう方向性じゃないのね」

「神様よりも、その辺の女の子の方が私の願いを聞いてくれっから」

「あんたモテるもんね」

「モテるというかヒモの特性が高いんだと思う」

「どういうことよ」

「ほら、姐さんってヒモになれそうにないじゃん?」

「そう?」

「なんか、ほっといても生きていけそうな」

「あー、そう見られがちかもね」

「事実はどうあれね。でも私ってワガママが聞いてもらいやすいというか。たぶん世話したくなっちゃうんだよな」

「言わんとすることは分かるわ」

「だろー。だから神様なんていらねえんだよ」

「そういえば新幹線の中で考えてたんだけどさ」

「なに」

「オナニーってはっきり言うじゃん、わたしたち」

「そうだな」

「隠さない?」

「は?」

「ほら、隠すというか、隠語? 直接言わないようにするというか」

「は?」

「例えば、オードリーのオールナイトだと、自分磨きっていうらしいの」

「私たちも真似するってことか」

「そういうこと。やっぱり電波に乗せてるんだし、もう少しオブラートにね」

「もしかして姐さん、恥ずかしいの?」

「そんなわけないでしょ」

「じゃあいいじゃん」

「なんていうのかなー、慎みというか」

「オナニーをオナニーと自信持って言えない奴はダメだ! 私はオナニーと言うぞ! オナニー」

「仕方ないか」

「ほら、姐さんも。オナニー」

「は」

「言えって」

「オナニー」

「よーし」

「何勝手に満足してんのよ」

「その方が気持ちいいじゃん。それに、たぶんリスナーも聞きたがってるよ」

「誰も聞いてないけどね。そろそろ締めるわよ」

「はいはーい」

「まずは宣伝よ。1月15日の日曜日にカバー曲を投稿するから聞いてね」

「絶対聞けよ」

「あと、メールフォームを作ってあります。概要欄にリンクあります」

「NGなしだ! 何でも来い! あと、私と遊んでくれる女の子募集中だ。何でもいいから連絡くれ」

「飢えてるわね」

「じゃ、最後に姐さんからの教養だ」

「今日の1句ね。山西雅子まさこの1句。浮かびくる如く石あり冬の水。浮かびくる如く石あり冬の水」

「また明日ー」

「行ってきまーす」


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