1月6日


ポン、ポン、ポン、ポーン

カシュッ

ゴクゴクゴクッ


「あ゛ー。sveidラジオ!」


「みんなー、オッハー。パーソナリティーの悠衣でーす」

「通勤お疲れ様です。お仕事頑張りましょう。詩です」

「お前らの通勤に絶望を添える朝から飲酒ラジオ。sveidラジオ! の時間がやってきました」

「昨日言い忘れてたんだけどね」

「なんだ」

「このラジオは一応宣伝番組なの。というのも私たちロックバンドをやっててね」

「そうなんだよー」

「今はまだオリジナル曲が出せてないんだけど、毎月第2、第4日曜日にカバー曲を投稿するから、ぜひ聞いてね」

「通勤の合間に聞け」

「このラジオもアーカイブ残すから、ぜひ最初から聞き直してねー」

「じゃあ今日の最初のトークテーマだな」

「その前に」

「ん?」

「昨日の宿題があったじゃない」

「なんだっけ」

「ほら。好きなAVの女優さんの話」

「あー、あったなー」

「何とか探したわよ」

「で、誰」

「いや、めっちゃ時間かかったんだからその苦労話を先にさ」

「そんなの誰も求めてないって。誰だよ」

「はあ。あのー、メーカーはレズれ! ってとこであってて。そこの『共鳴』って作品に出てる、向井藍さん」

「知らないなー」

「あの人がね。ちょっとカッコよくて抱かれたい」

「私よりもか?」

「あら、やきもち?」

「私よりも抱かれたいならもう抱いてやんない」

「それとこれとは話が違うじゃないよー。うりっ」

「おい、だから揉むなってー。私のこと大好きかー」

「ま、そこそこにね」

「腹立つなー」

「ちなみにあんたは好きな女優さんいるの?」

「私は、松本いちかだな。ちょっとブリッ娘で生意気な顔しててかわいいんだよ、これが」

「あんた好きそうね」

「こういう娘にさ、イヤイヤ言うのにさ。私のタバコが吸えないのか? って吸いかけのタバコ咥えさせたいよね」

「それはわかんないけど」

「でたぶん、咥えると煙が鼻に染みてむせたりするから、そこでキスしたいよね」

「苦しいでしょ、普通に」

「口塞がれちゃうから、鼻でめっちゃ息するからスンスン音するし、興奮するよね」

「あんたの性癖はわかんないけどさ、ん? 詳細過ぎない? やったことあんな?」

「ばれたかー」

「危ないからほどほどにしなよ」

「姐さんはヤニカスだからそのプレイできないしなー」

「演技くらいはしてあげるわよ」

「演技じゃ興奮しないんだよなー。いや待てよ」

「ん?」

「姐さんが演技してるなんて逆に興奮するな」

「逆って、何との逆なのよ」

「今夜は寝かさないぜ」

「寝るわ。明日も仕事があるもの」

「けちー」

「そういえば、あんたってなんで吸い始めたのよ」

「いや、知ってるじゃん」

「そういうことじゃなくない。ラジオよこれ。リスナーが知りたがってるでしょーが」

「いねえリスナーのことなんて気にする必要ねえって」

「そうだけど」

「今度聞かれた時に話すからいいよ」

「はあ。はいはい」

「あー、もう終わっちゃう。姐さん締めて」

「あんたは気楽でいいわね。宣伝よ。まずは、1月15日の日曜日にカバー曲を投稿するから聞いてね」

「絶対聞けよ」

「あと、メールフォームを作りました。今なら採用率100%。概要欄にリンクあります」

「NGなしだ! 何でも来い」

「あとは?」

「私と遊んでくれる女の子募集中だ。タバコ吸ったことがない子がいいな。ツイッターでDMくれ」

「それはほどほどにね」

「じゃ、最後に姐さんからの教養だ」

「教養って言っても大したものじゃないけど。私がいいと思った俳句を毎日1句紹介して番組を終わろうかと思うわ。偏差値が低すぎる番組のせめてもの抵抗よ」

「姐さんの発言も結構どうかと思うことあるけどな」

「うるさいわね。アンタよりはマシよ」

「その言い方が結構限界あるってこと自覚してるだろ」

「んんっ。人の世の窓打ちにけり冬の雨。人の世の窓打ちにけり冬の雨。西嶋あさ子の1句でした」

「よーし。また明日なー」

「お仕事頑張りましょ。行ってきます」

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