ハレンチな婚約者
くーねるでぶる(戒め)
短編 ハレンチな婚約者
私、エグランス・ドリドバの婚約者、ジェロラン・テンペイさまはハレンチだと思うのです。
この間、学院の中庭を2人で歩いている時なんて、突然わたくしの手を取って指を絡めてきたのですよ。
手を繋ぐのはいいです。わたくしだってジェロランさまと手を繋ぎたいですから。でも、指を絡めてくるのはハレンチだと思いますの!
中庭には他の貴族の目だってあったのに、ジェロランさまったらまるで気にしないで、わたくしの手の感想を言うんです。
「エグの手はちっちゃくてかわいいね」
「ぷにぷにでさらさらだ」
「食べてしまいたいぐらいかわいい」
わたくし、恥ずかしくて恥ずかしくて。もうどうにかなってしまいそうでした。顔も体も熱くなってしまって、その……手に汗をかいてしまったのです。
わたくしの汗なんて御不快でしょうから、ジェロランさまに手を離すようにお願いしたのですけど……。
「気にするな」
そう言って取り合ってもらえませんでした。一度断られてしまうと、二の句が継げなくなってしまうことがわたくしの悪い癖です。その後も長い時間、他の貴族たちが見ている前で、指を絡めたままで。わたくしは、恥ずかしくて死んでしまいそうでした。
しかも、ジェロランさまは時折、わたくしの手をキュッと握ってくるんです。わたくしの手とは全然違う、大きくて硬い手に包まれて、わたくしは、ジェロランさまが手を握る度に体がビクッとして、胸のドキドキが止まらなくなってしまって。心臓が破裂するかと思いました。
話はまだ続きます。むしろ、ここからが本題でしょうか。
その後、ジェロランさまが、わたくしを女子寮まで送ってくださったのですけど……。その最中ですか?ずっと指は絡ませたままです。恥ずかしいですけど、嫌かと言われると、わたくしも嫌ではなくて……。ついついそのままに…。
それでですね、女子寮に着いた際に、突然ジェロランさまが、わたくしの前で跪いたのです。
わたくしは突然のことに驚いて固まってしまいました。そんなわたくしの手を取ると、ジェロランさまは、わたくしの手の甲に、その、く、口付けをしたのです!
たしかに、この国には手を取って口付けをする風習はありますけど、あれって実は手に付けた指輪にしているんです。
そんなことジェロランさまも知っているでしょうに、わたくしの手の甲に、その、ちょ、直接口付けを!
何が起こったのか信じられなくて放心状態のわたくしに、ジェロランさまは「おやすみ」と言って行ってしまうし、女子寮では質問攻めにあうし、婚約者がハレンチだと大変です。明日どんな顔をしてジェロランさまに会えばいいのかしら。
ハレンチな婚約者 くーねるでぶる(戒め) @ieis
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