第二話
私は、キリがない、たんぽぽ除去を、玄関先だけで済ませて、玄関横の壁際を見る。
「なんでここだけ生えるかなぁ、スギナ」
庭と壁の間に砂利を入れてあるのに、何故か壁際だけスギナがわんさか生える。
「ついでにこっちもやっとくか」
「緊急警報、緊急警報、玄関前壁際……繰り返します……」
急に地下茎通路で緊急警報が鳴った。スギナー第一部隊隊長ハビールは、聞き逃して部下に問う。
「何事だ?」
「南玄関壁際部隊が殺られている模様です!!」
「そうか……」
「隊長! なんとかしないと! 命令を!!」
「いや、構わん。放っておけ」
「しかし!」
「でかい奴らは、知らないからな。俺らがどうやって、あそこに
「そ……そうなんですか?」
「だから、上だけむしっていくさ、去年と同じでな」
でかい奴らは、なんであんなに馬鹿なんだろう。あそこに俺たちがいるということは、あそこまで地下茎が届いているということだ。あの、草が生えてきにくいなどという砂利、あんなものに騙されている。大笑いだ。あんなもの、地下に潜れば幾らでも蔓延っていける。
「え〜、なんだよ、これぇ」
私は壁際のスギナをむしっていたが、そう言えばいつもむしって終わりにしていたな、と思い、残った根っこを引っ張ってみたのだ。ダダダダ…と手ごたえがあって、砂利の間を地下茎が走る。
「地下茎でこっちまで来てたら、砂利なんか意味ないじゃん。もう!」
キリがないなあ。
とりあえず、地下茎も、ブチッと千切れるところまでは、むしりとった。
「あ〜ダメだ。ご飯作らなきゃ。明日から本格的にやるかなあ」
パンパンと軍手の土を落として立ち上がり、家事に戻った。
「緊急事態です!!」
スギナー第一部隊体調ハビールの所に部下が駆け込んできた。
「どうした?」
ハビールは、今年のツクーシの出来栄えと分布図の書類から視線を上げた。
「でかい奴らが、砂利地帯の地下茎に気づいた模様です」
「何?!」
「このままでは、他の地下茎の存在を知られるのも時間の問題かと……」
「……」
「隊長!!」
「焦るな。大丈夫だ」
「ですが!!」
「でかい奴らが全部取り切れるほど、我々の地下茎網は甘くない。どこかで切れれば、またそこから地下茎を延ばすさ」
「放置しろというのですか?!」
「大丈夫だ。切り刻まれても地下深くで生き残っていたという記録もある。俺たちの生命力を信じろ」
「しかし……少なくとも地上からは消滅するかと……」
「ふふ……ツクーシの胞子はもうそろそろ飛んで落ち着く頃だろう。意味がわかるよな?」
「あっ、それは……別のところに新たな仲間が出来るという……」
「全部が、とはいかないだろうが、実際、去年はなかったはずの西側の土手にも、我々の仲間は蔓延っている」
「なるほど」
「俺たちの生命力を信じろ。俺たちは、世界征服を目指すスギナーだぞ」
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