起こりがちなこと
そもそも柚が話したいと思っていたことはたぶん鈴のことだろう。
過去に二人の間で何かあったのは間違いない。
柚があれだけ分かりやすく嫌悪感を示すのを今まで一度も見たことはなく、彼女の態度を見てからずっと気になっていて何度か聞こうとしたが聞けないまま今日になった。
彼女がどんなことを話すかを考えても意味はないとわかりきっている。
それでもついつい考えてしまう。
たぶん何があってもいいように準備している。
ここで考えるのをやめた。
時間的にもそろそろ彼女がお風呂を出るころだろう。
そう思い自分のお風呂の用意をするために自分の部屋に行く。
ドアを開けてから気づいたことだが部屋に入るのはやめておいた方がよかったかもしれない。
すっかり忘れていたがこの部屋で柚は着替えをしていた。
そのために着替えを一度僕の部屋に置いているはず。
つまりこの部屋には彼女の服があるということだ。
数分前の出来事を思い出す。
彼女がお風呂に入るとき持って入ったのはバスタオルだけだったはず。
ということは彼女がお風呂を出て向かうのは僕の部屋になる。
結論を言おう。
ドアを開けた先にいたのはバスタオルを巻き、パンツを足に通しはこうとしている柚がいた。
髪は完全に乾いていないのか若干湿っており、いつもとは違う雰囲気を感じる。
頬は少し赤く、全体的にほてっているように思う。
本人には言えないが色気のようなものを感じドキドキする。
なぜか僕の目が彼女の唇から数秒離れず、キスしたときのことを思い出してしまい顔が熱くなる。
彼女は彼女で僕が部屋を開けたことで数秒制止したがすぐに僕のベットから毛布をとりくるまった。
恥ずかしそうに目をそらし若干涙目になっている。
その姿にまたドキッとしてしまったことで僕はもしかしたら変態なのかもしれないと思う。
変な気持ちが湧いてきたのを否定するために彼女から目をそらしドアを閉めようとした。
「優希、ちょっとそのまま待って」
柚の言った通りその場で止まる。
背を向けたままなので彼女の姿は見えないが一応目をつむっておく。
最低限のマナーとしてそうしたが目を閉じたことで逆に変な気持ちになる。
聴覚がいつもより過敏になっているような気がしてしまう。
背後でシュルシュルと布がすれる音がしてつい想像が働く。
たぶん着替えているのだろう。
ついさっき見た光景が頭に浮かび、なんとかそれを振り払うために別のことを考えようとする。
今日の授業のことを思い出し何とか落ち着けた。
ほっと安心できたのはほんの一瞬。
背中にぬくもりを感じまた変な気分になってしまう。
それは柔らかな感触でもちっとしている。
「優希、振り返っていいよ」
彼女にそう言われて目を開けて振り返ると僕のシャツを着た柚が目に入り緊張してしまう。
これが彼シャツというものだろうが想像していたよりもなかなかに来る。
それに加えて柚は風呂上がりでドキドキしない人はいないだろう。
冷静になるために一度後ろを向いて僕はその場にしゃがみこんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます