涙の理由

 柚が座り込んでから数分が経つが彼女は変わらず泣き続けている。

どうしてそんなに泣いているのか本当にわからない。

わからないなかで何とか泣き止んでもらおうといろいろすることにした。


 彼女を優しく抱きしめ、背中を撫でて落ち着いてもらおうとしたが結果として逆効果になる。

泣き止むどころか彼女はさらに泣く。


 これは何もしないほうがいいだろう。

そう思い彼女から少し距離をとり泣き止むのを待った。


 泣き止んだ彼女は立ち上がると僕の目をまっすぐに見つめる。

泣いていたから目元は腫れ、目は充血していた。


 「優希、ありがとね」


 首を横に振る。

彼女その反応を見て少し微笑む。


 「いきなり泣いちゃったからびっくりしたよね?」


 「帰ったら理由話すから早く帰ろ」


 そう言い僕の手を引き家へと向かう。


 家の前につき、ドアをそっと開け中に入る。

手を洗った後で買ってきた総菜をテーブルの上に並べた。

一応、叔母の部屋に行き起きているかどうかの確認をする。

まだ眠っていたので叔母の分を先にとりわけ、その分を冷蔵庫にしまい食器や箸を用意しご飯を食べる準備を済ませ席に着く。


 手を合わせ、「いただきます」といったところで彼女が口を開く。


 「泣いちゃった理由なんだけど嬉しかったのもあるけどさみしかったからでもあるんだ」


 「この間話したけど転校先ですぐに友達はできたけど不安だったの」


 「優希と離れたことで自分でもびっくりするくらいダメージを受けてて、もしかしたらもう二度と会えないのかもって考えちゃうことが多くなってた」


 「だから、入学式で優希を見かけたときすごいうれしかったんだ。でも、同時にさみしさもあったんだよ」


 「私の知ってる優希とはちょっと違ってた。だからもう私が入る隙間はないと思ってた」


 「でも、今日プリンを渡してくれた優希が昔から知ってた優希だったから安心して、安心したら泣いちゃったんだよね」


 そう言うと柚は優しく微笑んだ。

そんな彼女をついからかいたくなりからかうことにする。


 「え、そんなに僕のこと好きなんだね。柚ってそういうところかわいいよねぇ」


 彼女にそう言うのは照れるが柚をからかえるのならそれは気にしない。

ニマニマして彼女が照れるのを期待する。

でも彼女の反応はある意味で期待通りではあったが、予想以上だった。


 柚は照れくさそうにそっぽをむき、ほっぺを膨らませながら僕のことを横目で見て口を開く。


 「優希のことは好きじゃないよ。大好きなんだから間違えないで! 」


 柚のその言葉で僕の心拍数が上がる。

恥ずかしくなって彼女のことを見れなくなった。

柚に気づかれないようにするためにいつも通りをできる限り装う。


 その後は特に会話はなく二人で黙々とご飯を食べる。

食べ終わるころにはいつも通りに戻っていた。

ようやくこれで本題に入ることができる。

二人で片づけをした後、お風呂を済ませたら僕の部屋で話すことになった。


 柚がお風呂に入っている間に頭の中を軽く整理しようと思う。






 








 



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