幽霊の正体?
着替えていたはずなのに下着姿で立って涙目になっている柚がいた。
状況を理解できずとりあえず目をそらす。
頭の中がぐちゃぐちゃになりながらもなんとか言葉を紡ぐ。
「ゆ、柚なんで服着てないの? 」
素直にそう聞くしかなかった。
本当なら何か隠すものを渡して何があったか聞くべきだっただろう。
それをできない自分に落ち込む。
「でた、出たの幽霊が」
本当に怖いと思ったのだろう。
柚が抱き着いてくる。
彼女の心臓の音が聞こえてきて緊張してしまう。
もちろんどきどきしているのはそれだけでなく伝わってくる柔らかな感触や涙目の異性に下着姿で抱き着かれていることも原因の一つ。
それに柚みたいな可愛い子に近づかれてドキドキしない男はいない。
変な気分になってくるのを何とか抑え彼女を安心させることを優先する。
話を聞かないことには何も見えてこないので彼女から少しでも話を聞く。
「幽霊ってどこに? 」
柚は黙って僕の手を引きリビングまで行くとお風呂場の方を指さす。
彼女が指さした方を見ると人影がありそれを幽霊だと思ったらしい。
「ほら、いるでしょ?幽霊が」
また彼女は抱き着いてきて僕は体勢を崩す。
彼女をかばうために自分の体を下に入れる。
その結果、柚の唇が僕の唇と重なり押し倒されているような形になった。
柔らかな感触と人の熱のあたたかさが伝わる。
柚の目が見開かせたまま固まった。
だんだんと彼女が熱くなり頬が染まっていく。
何とか彼女をどけようと思うもどこを触ってもよくない気がしてできない。
でもこのままいるわけにはいかないので彼女の肩あたりを持ち僕と彼女の位置を入れ替える。
結果として僕が彼女を押し倒している形になった。
すぐに離れようとしたとき別の人の声が聞こえる。
「優希、あんたも男なんだね。これは姉さんに報告しないといけないね」
声の方を見るとそこにいたのは叔母だった。
いつの間にか家に入ってきていたらしい。
素早く彼女から離れ叔母に説明しようとしたが止められる。
「あれ、もしかして柚ちゃん?」
「あんたらそういう関係だったのか」
僕がどいたことで彼女の顔が見えて分かったのだろう。
かなり小さいころに柚と叔母は一度会っている。
「え、未希叔母さん? 」
未希というのは叔母の名前だ。
柚もよく覚えているなと感心する。
「やっぱり柚ちゃんか」
「ずいぶんかわいくなっちゃって」
話に花が咲く。
柚は彼女にかなりなついていたことを思い出す。
正体が分かったことで安心した柚は叔母に抱きつきに行く。
叔母も彼女を受け入れ優しく抱きしめる。
「未希叔母さんのにおいやっぱり落ち着くなぁ」
こういう部分は叔母相手にしか見せない。
全力で甘えている姿は姉妹のように僕の目に映る。
叔母も柚に甘えられてまんざらでもないようだ。
ほほえましく見守っていたが僕はすっかり忘れていた。
柚が下着姿だということを。
僕が目をそらしたことで何かを察した叔母。
柚の耳元で何かを言った後、僕を見る。
「柚ちゃんを着替えさせるためにあんたの部屋借りるよ」
「このまま移動するからあんたは後ろを向くか目を閉じて」
「いくよ、柚ちゃん」
おばさんの言うことを聞いて背を向け、目を閉じる。
二人が僕の後ろを通り過ぎ部屋のドアを開け、閉じる音がした。
念のためまだ目を閉じておくことにする。
目を閉じているからか普段よりも音が聞こえているように思う。
一度遠ざかったはずの足音が近づいてくる。
「もう目を開けていいぞ」
背中をたたかれ目を開ける。
そこにいたのは叔母だった。
「今の間に、柚ちゃんとの関係を聞かせてもらおうか」
「一応、保護者代理としては聞いておかなくちゃいけないことだからね」
まっすぐ見つめられると叔母だとしても緊張してしまう。
叔母は僕とは違い顔が整っているため、かなりの美人だ。
年もまだ20代と若く、叔母というよりも姉といった方がしっくりくる。
確かにいろいろと助けられているのは事実なので話すことにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます