四人で家へ
柚が落ち着いてから四人で帰ろうということになり、彼女が落ち着くのを待つ。
その間、鈴はずっと彼女の背中をぽんぽんと叩きある言葉を繰り返す。
「大丈夫、大丈夫だからね」
優しい口調で柚を抱きしめている彼女の姿はまるでお母さんみたいだとそう思った。
だんだんと親子に見えてきたのは気のせいだろう。
柚が落ち着くのに時間はあまりかからなかった。
「じゃあ帰るか」
奏多の一言に僕を含めた三人は頷き、校門へと向かう。
四人で帰るのはこれが初めてになる。
そう思った瞬間緊張が押し寄せ、変な汗が滲む。
意識しないように何か話をしなければいけない。
ただ、話す内容なんてあるわけはなく必死に考える。
すぐに思いついたものはあるがこのタイミングで言うのは違うかもしれない。
それでもここで言うべきだろう。
一応、奏多に聞いてからにしよう。
「奏多、あの話はもうした? 」
「してないならいま話してもいい? 」
そう、勉強会のことだ。
彼が話しているのであればこれは必要のないこと。
彼に聞いたのはもし話していなかったら話題になるという理由と話していたとしても空気は変わるだろうという予想。
僕がしたいのはいま流れている空気を変えたいという一点だけ。
「あー、まだ話せてないし話すのもいいかもな」
「なになに、何の話?」
奏多のその言葉に柚が反応し彼に近づく。
付き合っているから当たり前といえば当たり前のことだが、本当に付き合っているわけじゃないのにそんな行動をとるのだろうか?
そんなことを思いもやもやしてしまう。
これ以上二人が近づくのを見るのは嫌だったので彼が答える前に僕が話すことにした。
「実は今度勉強会を僕の家でする話をしてて、もしよかったら宮守さんもどうかな? 」
できる限りいつも通りを装いいつも通りの話し方で彼女に言う。
奏多が誘った方がいいのかもしれないが、僕の家を使うのだから別におかしくはないはずだ。
彼女は少し奏多から離れ、柚のほうをちらっと見てから口を開く。
「それってこの四人でってこと? 」
僕らが頷いたのを確認して再び口を開く。
「そっか、家の人にはもう許可とってるんだよね?なら、参加しようかな」
鈴の言葉に柚が口を開きかけたが止めた。
僕の方を見て話すべきではないと思ったのだろう。
柚のほうを見ていた奏多が不思議そうな顔をして僕に聞いてくる。
「優希、何かあるのか?」
「言いにくいことだったら言わなくていい。でもいえるなら聞いておきたい」
彼がまっすぐ僕を見てそう言った。
どうするべきかしばらく悩む。
柚には話したが、あまり話したくないことではある。
聞こえ方によっては自分はこれだけ大変なんだという風に取られるかもしれない。
僕自身は本当に何とも思っていなくて、そう思われるのは嫌だ。
もちろん寂しいと感じるときはある。
でも、一人のほうが気が楽だという気持ちのほうが強い。
そこを他人に辺に詮索され想像されるのは本当に嫌だ。
「優希?どうしたんだ」
奏多の声で三人が心配してくれていることに気づく。
話しづらくしているように見えたのだろう。
これはもう言った方がいい。
彼と彼女ならほかの人に話すこともないだろうし、どうせいつかばれること。
「もし時間あるなら家こない? 」
「ちょっと時間かかっちゃうから」
ここで話すよりも実際に家に来た方がわかる。
あえて重い話だと思わせておくのもありだろう。
鈴と奏多がお互いの顔を見てから僕を見てそれぞれ返事する。
「俺は大丈夫」
「私も大丈夫だよ」
柚を見ると頷いたので、四人で家に帰ることにした。
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