クラスでの出来事

 昼休みにいつもより多く食べたからなのか午後の授業はずっと眠たかった。

そのせいでほとんど記憶がなく気づいたら放課後になっていたような感覚。

反省しながら帰る準備を進めいつも通り柚のクラスへと向かう予定だった。


 席を立つ直前、予想外のことが二つ起きる。

一つは柚がこのクラスに来たこと。

もう一つは鈴に話しかけられるという普段ならありえない状況。


 柚が来たことについてはなんとなく理由はわかる。

唯香との件があってから気まずくなっていてその気まずさをなくしたいのだろう。

それと柚を送り届けた後に何があったかを知りたいと思っていてもおかしくない。


 わからないのは鈴で、彼女のとった行動でクラス内が軽くざわつく。

同じ中学出身だということを自己紹介の時に話したがそれ以外の接点はないと思っているはずだ。

仮に接点があるとすれば奏多の友達だということくらいしかない。

だからこの状況をよく思っていない人も多いようでこそこそと話しているつもりなのかもしれないが聞こえてくる。


 聞こえていないふりをして無難に過ごそうとしたがそうはさせてくれなかった。

柚がこそこそと話していたクラスメイト達に聞こえるように言う。


 「人のことなんだからほっといてほしいかなぁ」


 「それに私、仲良くない人のことを悪く言う人嫌いなんだよね。そういう人とは友達になりたくないなぁ」


 どういうつもりでそれを言ったのか僕にはわからない。

彼女のことをわかるには彼女のことを知らなすぎる。

だからもっと鈴のことを知りたいと心からそう思う。


 彼女のその言葉でさっきまでこそこそと話していた人の声がなくなり、音が消えたと錯覚するくらい静かになった。

空気が少し重くなり、嫌な雰囲気に包まれる。


 何とかしなくてはいけない。

そう思っても僕には何もできないことを知っている。

ただ黙っていることしかできない自分のことが嫌いだ。

そんな僕を放って彼が動く。


 「まぁ確かに嫌だよな。こそこそするくらいなら直接言いにくればいい」


 「だから何か言いたいことのあるやつはいま前に出て来いよ」


 奏多が選んだ方法は自分も悪くなることだった。

褒められた方法ではないかもしれないが彼女にとって同意してくれる相手がいると分かるのはいいことだろう。


 それに実質クラスのツートップからそう言われると何も言えなくなる。

前に出て言いたいことを言えたとしてもこの二人に嫌われてしまうかもしれない。

その怖さに勝てる人がいるわけはなくほかのクラスメイトは黙った。


 誰も口を開けなくなったところでずっと教室の外にいる柚のもとに行く。

気まずそうにしている彼女を見るのはこれが何度目だろうか。

柚に声をかけて一緒に帰ろうと声をかける。


 「ごめん、帰ろうか」


 彼女は僕の言葉を聞いていないようで奏多を見ている。

たぶん心配しているんだと軽く捉えていた。

そうではなかったことを知るのは彼女の行動を見たから。


 彼女は奏多と鈴の方に歩き二人の前で止まる。

柚は胸の前でグッとこぶしに力を入れ、口を開く。


 「もしよかったら四人で帰らない? 」


 静かになっていたからか柚の声がクラス内で響いた。


 





 




 


 





 




 


 

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