彼と秘密の話
「実は宮守さんのことが好きで柚にはそのことで協力してもらってるんだ」
「宮守さんが奏多と付き合ったことであきらめようとしたんだけど、どうしてもあきらめきれなかった」
「そこで奏多から彼女を奪うために協力を頼んだんだよ」
「僕と柚がいい感じなのを見せたらちょっとは嫉妬してくれるかも?っていう期待をした。だから奏多にさっき付き合ってるって言ったんだよ」
そう伝えると彼は何か察したような顔をした。
その顔はだんだんんと難しいものに変わる。
やはり何か事情があるみたいだ。
僕と柚の今の関係に近いようなものがあるのかもしれない。
正直に言えばそのことを今すぐに聞きたいと思っている。
でも、いまそれを彼に聞いたところで答えないだろう。
それに、あまり踏み込みすぎるのもよくない。
いつか話せるようになったときに話してくれればそれが一番いいと心の底からそう思う。
彼が口を開く前に話を続ける。
「ごめん、彼女のことを狙ってるとかきもいよね。もう関わらないから今話したことを忘れてほしい」
そう言って今度は僕が教室に向かうことにしたがそれを彼が止めた。
「ちょっと待った。さっきの話の中で一つだけ聞きたいことがある」
「それを正直に答えてくれたらこの話は忘れて今まで通りの友達でいよう」
彼が本気で言っていると直感で分かる。
本気には本気で返したいが何を聞かれるのかわからないので怖い。
その怖さは彼の目が見れなくなるほど。
そんな僕をよそに彼は口を開く。
「いつから鈴のことを好きだったんだ?それだけは聞いておきたい」
彼の口から出た言葉は意外なものだった。
彼女のことをそんな目で見られるのは普通なら嫌だろう。
僕はすでに気付いているからいいものの、ほかの人に同じような反応をしてしまうと変に勘繰られるかもしれない。
そんな心配をしたところで意味がないことはわかっている。
この数週間、周囲に気づかれていないことがそれを証明しているから。
考え事をするのはあとにして彼に返事をする。
「中学に入ってすぐに気になってたんだ。好きだって気づいたのは中学2年のときだよ」
「それからずっと好きなままだよ。これで聞きたかったことの答えになるか な? 」
奏多は僕の返事に頷くとすぐにまた難しい顔をする。
納得したような反応をしたあとは普段通りの彼に戻った。
「そろそろ教室に行くか。もうそろそろチャイムが鳴るだろうし」
そのまま移動し始めたのでそれについていくように僕も歩く。
下駄箱で上履きに履き替えたタイミングで彼が口を開いた。
「お前だから彼女はそうしてるのかもしれないな」
奏多の言った彼女はたぶん鈴のことだということ以外は全く分からない。
考えようとしてみるもそもそも何を考えればいいのかが分からずに諦める。
その代わり、例の作戦を実行することにした。
教室についてしまったら奏多と秘密の話をすることがほぼ不可能になる。
話の流れはないが彼に話すことに決めた。
「そういえば今度、家で勉強会をしようって柚と話してるから奏多もどう? 」
「あともしよかったら、宮守さんも呼んで四人でしない? 」
そう提案すると奏多は驚いたような顔をしたがすぐに口を開く。
「そうだな、放課後にでも誘っとくよ」
ここでチャイムが鳴り、急いで教室へと向かう。
担任が来る前に無事につき自分の席に着いたことでやっと落ち着く。
落ち着いたからかおなかが鳴った。
(そういえばおにぎり食べるの忘れてた)
おなかが鳴っているのをばれないように気を付ける。
こんなに昼休みを待ち遠しく思うのは初めても知れない。
本当に早く昼休みになってほしいと思いながら午前の授業を何とか乗り切った。
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