男同士の約束1

 翌朝、目が覚めたのは5時半。

起きてすぐさっとシャワーを済ませ昨日のことを思い出す。

彼女が最後に言ったことが頭から離れない。


 柚のことはちゃんと見ているつもりだ。

それなのに彼女がそう言っているということは柚のことを見ていないのかもしれない。

自分の都合のいいように柚を見ているのだとすればそれは利用しているといえるのではないのだろうか?


 もしそうであるなら彼女が言ったことは当たっている。

つまり僕は彼女のことを見ていないということになってしまう。

確かに、自分の中で柚はこうだという勝手な理想を押し付けているという感覚は正直ある。

でもそれは信頼しているからであって彼女のことをみていないわけじゃないはずだ。


 (これ以上考えたところで意味はないし、いったん置いておいた方がいいかもしれない)


 そう思いいつも通り学校に行く準備をする。

すぐに終え時計を確認すると7時20分になっていた。

学校までは40分かかるためそろそろ出ておいた方がいいが、朝ご飯は食べたい。

普段なら簡単なものを作って食べるが少し面倒だったこともあり食パンを一切れだけ取り出す。


 食パンを口に加えもぐもぐと食べながら制服に着替える。

食べ終わるのとほぼ同時に着替え終わり、忘れ物がないかの確認を済ませ急いで家を出た。


 家を出てすぐ物足りなさを感じ、近くのコンビニに寄り鮭と明太子のおにぎりを購入。

おなかが鳴るのは恥ずかしいので教室についたら食べようと思う。

数歩歩いたところでお茶も買っておくべきだったのかもしれないと後悔する。


 学校についてすぐに自販機へと向かう。

無事お茶を買い教室に向かう途中で呼び止められる。


 声をかけてきたのは奏多だった。

意外だったため少し身構えてしまう。


 「おはよう。ちょっといま時間いいか? 」


 そう言ってベンチのほうを指さすのをみて少し嫌な予感がした。

立ち話でないということは割と時間がかかる話なのかもしれない。

返事の代わりにベンチのほうに歩きだし彼もベンチのほうに歩き二人同時に座る。

座ってすぐ奏多は口を開く。


 「こうやって話すのは初めてだな」


 彼にしては珍しく緊張しているみたいだ。

たぶん彼が聞きたいのは柚のことだろう。

何を聞かれても柚と立てた作戦は実行するつもりだ。


 「単刀直入に聞くけど九重と付き合ってるのか? 」


 予想通り柚のことだった。

やはり奏多は彼女のことが気になっている。

友達にウソをつくのは気が引けるが決めた通りの答えを返す。


 「うん、付き合ってるよ。だからこの前、家に呼んで二人で過ごした」


 そういうと明らかに彼は動揺した。

奏多のその行動で唯香が言っていたことが本当だと感じる。

普通彼女がいるのにほかの相手のことで嫉妬しているような顔はしない。


 「そうか、良かったな」


 そう言った彼の顔は少し悲しそうだった。

その反応に胸が締め付けられる。


 「ただそれを聞きたかっただけなんだ。時間取らせてごめんな」


 立ち上がりそう言い教室に行こうとする彼を呼び止める。

奏多にはうそをつきたくないとそう思う。

柚を裏切ることになってしまうかもしれないが正直に話すことにした。


 「ちょっと待って。ここからの話は宮守さんに言わないって約束してくれるなら話すよ」


 奏多に提案すると少し間をおいてから僕のことを見て口を開く。


 「ああ、何か事情があるんだろう?」


 「俺はお前のことを信じてる。だから黙っておく」


 彼らしい返事だなと思いながらどう話すか考える。

もちろん柚が奏多を好きなのは隠さなければならない。

僕に協力してくれているということにすればそのことを隠し話ができるはずだ。


 唯香の時とは違う緊張がある。

その緊張は柚の気持ちがばれないようにしないといけないからなのだろう。

軽く息を吐きだし心を整える。


 (まずい緊張で吐きそうだ)


 落ち着いたところで彼を見て話すことにした。


 


 








 

 


 

 







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