作戦失敗?
その前に聞いておかなければならないことがある。
もちろん彼らのことだ。
「本当に付き合ってるわけじゃないってどういうことですか? 」
どうして唯香がそのことを知っているのか?が気になっていた。
一番気になっているのは接点はないはずなのに奏多のことを知っていること。
たぶん彼女はこう答える、柚が転校先で仲良くなった子だからと。
だからそこではなくこういう問いかけた。
「そのままの意味だよ。本当の恋人じゃないってこと」
そういうとピザを一切れ取り幸せそうな顔をしながら食べる。
口からピザがなくなったタイミングで彼女は僕が聞きたかった答えを言う。
「気になってると思うから先に答えておくと奏多とは仲良しだったんだ」
「柚と仲良くしてたこともあって向こうに住んでた頃はよく家に来てたの」
「いろんな相談されてていまもその関係が続いてるんだよ。本当はこういうことを聞きたかったんだよね? 」
すべて見透かされていたことで、やっぱり彼女に隠し事はできないとそう思う。
ここまで見透かされているのであればたぶんあのことにも気づいているはずだ。
僕が立てた作戦はここまでらしい。
作戦は中止しよう。
もうすべて正直に話す方がいいのかもしれない。
「実は僕と柚はそれぞれその二人のことが好きなんです。だから協力して奪おうと思ってます」
「だから、唯香さんから本当の恋人じゃないって聞いて正直頭がぐちゃぐちゃになってます。どうしたらいいんでしょう? 」
きっと彼女は否定せずに聞いてくれるはずだとそう思ったからすべてを伝えた。
話せたからか僕の心は少し軽くなった気がする。
これで作戦はうまくいかなかったがきっといいようになるはずだ。
そう思っていた僕の考えが間違いだったと彼女を見て気づく。
彼女は僕をまっすぐに見つめ涙を流した。
唯香の涙を見るのは初めてでどうしていいのかわからなくなる。
何とかカバンからハンカチを取り出し彼女に手渡そうとするも拒否された。
「ごめん、お手洗い行ってくる」
彼女はそう言うと足早にお手洗いに向かう。
残された僕は何が起きたのか理解しようと頭をフル回転させるもわからない。
唯香がなく理由はないはずだ。
もしあるとするならありえないと否定した想像が当たっていることしかない。
その想像は柚が僕のことを好きだというありえないもの。
別の理由も考えられないわけではないがそれの方がありえない。
そう考えると柚のことしかなくなる。
彼女が泣くのはたぶん妹のため以外にないとそう思うから。
僕の考えがまとまる前に彼女が返ってくる。
涙は止まりいつも通りの表情だが少し怒りに近いものを感じてしまう。
席に座り僕をまっすぐ見つめ口を開く。
「あの子が、柚が奏多を好きだと思ってるわけだよね?なんでそう思ったのか聞いてもいいかな? 」
腕を組んで聞かれるといつも以上に圧を感じる。
それに加えて貧乏ゆすりをしているのか体が少し揺れていた。
「柚から直接聞いたんです」
声が上ずったが何とか返す。
僕の返事に納得したのか組んでいた腕がほどかれた。
少し安心するがその安心は長くは続かない。
「あの子らしいなぁ。それをそのまま受け取ったんだね」
「なら仕方ないかもしれないね。ごめんね、ちょっと怖かったでしょ?」
「さめちゃうから早く食べちゃおうか」
そう言うと彼女は自分が食べる分をとりわけ残りを僕の前に置く。
そのまま食事を再開し僕も食べる。
その後は特に何も起きず食事を終え会計を済ませた。
時計を見ると21時になっていたので彼女を家まで送る。
その道中も言葉を交わすことはなく彼女の少し後ろを歩く。
家の前につき彼女が口を開く。
「あの子のことも見てあげてね」
そういうとドアを開け家に入った。
僕は自分の家に帰りながら彼女が最後に言ったことを考える。
柚のことはちゃんと見ているつもりだがもっと見た方がいいのかもしれない。
家に着くといろいろあったからなのかそのまま自分の部屋のベットに倒れこむ。
頭を使いすぎたからまた明日考えよう。
そう思い眠りについた。
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