生徒会長はシスコン
ファミレスにつくまでの数分で作戦はある程度立てることができ、あとは実行するだけだ。
入店し店員に案内された席に着く。
奥側に彼女が座り、その対面に僕は座る。
注文するためにメニュー表をとりメニューを眺めつつ彼女の様子をうかがう。
彼女もメニュー表を見ながら悩んでいる。
その姿をみてクスッと笑いそうになるのを我慢するも声が漏れてしまう。
やっぱり姉妹は似るのかもしれない。
「いきなり何?怖いんだけど」
若干引き気味に唯香が言った。
その反応に対して彼女に近いものを感じさらに笑ってしまう。
似るかもしれないと思ったのは否定しなくてはいけない。
彼女たちは間違いなく似ている。
引き気味だった唯香はさらに引いていて、不気味なものを見たような目を向けられる。
何とか誤解を解くために思っていたことを口に出す。
「いや、柚とやっぱり似てるなぁと思ったらつい」
そう言うと納得したのだろう。
引き気味だった反応から通常に戻り、またメニュー表とにらめっこしている。
僕もメニュー表に目を落とし選ぶ。
ハンバーグかパスタの二つまで絞り込んだところで彼女に聞いてみる。
「どれで悩んでます? 」
そう聞くとメニュー表を僕に見せ、それぞれ指をさす。
「これかこれで悩んでる。どっちもおいしそうで」
彼女が指したのはパスタとピザだった。
僕が食べたいパスタと同じだったため提案することにする。
「パスタ頼むからちょっとシェアしませんか?」
唯香は嬉しそうに頷くと店員を呼び注文を済ませる。
店員が離れた後すぐ本題に入った。
「で、あの子と付き合ってるの? 」
予想していた通りの質問がくる。
わざと聞き返すこともできるがそれは悪手だろう。
だから正直に答えることにした。
「付き合ってないですよ?ほかに好きな人もいるんで」
そう正直に答えたのが意外だったのか少し驚いた顔をする。
はぐらかすと思っていたのだろう。
確かに今までの僕なら彼女の想像通りの返事をしていたはずだ。
今が好機かもしれない。
ほかに変なことを聞かれる前に攻めるべきだ。
そう考え、準備していた作戦をいま使う。
「唯香さんって、柚の好きな人知ってますか? 」
僕が立てた作戦は、興味の方向を別に向けるというもの。
これは彼女のことを知っているから立てることができた。
結論を言えば彼女はかなりのシスコンである。
昔、僕が柚と仲良くしているのが気に食わずよく嫌がらせをしてきていた。
ほかの男子はもちろん、女子にも同じことをしているのを何度か見かけたことがある。
つまり、柚といたときの僕に対する態度は彼女から遠ざけるためのものだ。
キスをしたのも多分その一つ。
自分がどうなってでも妹を守ろうとしている。
あの行動で柚が僕から離れるとそう思ったのだろう。
でも結果として離れるどころか自分に対し怒りを示した。
柚のとったその行動は彼女の目にどう映ったのだろうか。
少なくとも安心しているわけではないことがわかる。
だからこうして僕との時間を作った。
その行動が妹のだとわかるため、どうしてもこの人のことは嫌いになれない。
嫌いになれないが苦手なことには変わらないので結局僕は彼女が苦手だ。
「え、好きな人いるの? 」
彼女の反応を見るに知らないようだ。
ここまでは作戦通り、あとはうまく進めて理解してもらうしかない。
もしうまくいかなかった場合のことはその時に考えようと思う。
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