協力スタート
ここから先は具体的なことを考えなければならない。
協力し合っていくために方向性を決めておくことでぶれないようにする必要があるからだ。
まぁ、それは今度でいいだろう。
窓の外を見るといつの間にか日が沈み辺りは暗くなっていた。
そろそろ帰った方がいい。
なんだか今日はいつも以上に疲れているように思う。
今日だけで考えることが多かったからなのかもしれない。
「そろそろ帰ろうかな。また柚と話せて嬉しかったよ」
そう彼女に伝え、家を後にしようとした。
ドアを開ける直前に小さな声で何かを言っていたことを気にしないようにしつつ、今度聞けるときに聞けばいいやと思いあまり考えないように歩く速度を少し上げ誰もいない家へと帰る。
翌朝、学校に行く途中で柚に呼び止められた。
「おはよう。今日も放課後話したいんだけど今日お父さんいるから私の家は無理かも」
どこかいい場所はないか話し合いながら並んで歩く。
学校で話すのは危険だろう。
そもそも外で話すこと自体がよくないかもしれない。
本当は嫌だけど協力すると決めた手前提案する。
「もしよかったら今度からは家にくる?誰もいないからいつでも大丈夫だよ」
彼女のほうを見ないように言う。
きっと柚はいま僕のことを心配そうに見ていると容易に想像できるから。
それに聞きたい気持ちを我慢して僕のことを気遣うはずだ。
家に誰もいないと聞いた人がどうするかはわかる。
大体二つに分かれ、ひとつは余計な詮索をしたうえでかわいそうだと見下す。
もうひとつは触れられたくないだろうと気を遣いつつ関わってくれる。
実際に中学の頃友達に話したときとられた対応だ。
だからこそ彼女がどうするのかわかってしまう。
申し訳なさでいっぱいになり目を見れないということも関係しているのかもしれないと自己完結しておく。
足元を見ながら会話も交わさず並んで歩いている状況は周りからどう見られているのかが気になってしまう。
当然、柚のことも気になってはいる。
本当は顔と反応を見て、安心したい。
いまとっている態度はよくないことで、余計な心配をかけてしまうのはだめだ。
怖くてたまらないがここで逃げるのはよくない。
こぶしを作り力を込め勢いよく頭を上げようとする。
頭に何かが当たった。
硬いものではなくほんのりとぬくもりを持っているやわらかいもの。
それが彼女の手だと気づくのに時間はかからない。
いままで見たことがないとても優しい目をして手を伸ばし頭をなでようとしてくれている途中、頭を上げた結果としてそうなった。
僕に当たったことで一度引きかけていた手を再び伸ばし、今度はちゃんと頭をなでる。
「大丈夫だよ。もし話せることがあったら聞くからね」
そういった後すぐ手を引いた。
通学路だということを思い出したのか僕から少し離れる。
周囲を見ると何人かの生徒がざわついてこそこそと話す。
この状況は確かに恥ずかしい。
変な噂をされるかもしれないと考えたものの勘違いされている方が動きやすくなる。
今後のことを考えるとそういう選択もありだ。
あえて柚に近づき周りに聞こえるくらいの声で話しかける。
「じゃあ、今日の放課後家に来て二人で話そうよ」
柚が恥ずかしがっているのを確認して彼女の手を取り走り出す。
後でちゃんと説明しなきゃいけないなと思いながら足を止めずに学校へと急ぐ。
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