第2話 戸塚 結人、参上!
「そういや、結衣って弟いたよね?」
ふと思いついた瑠璃は、そう尋ねた。
結衣と瑠璃は中学からの友人だ。中学の頃はよく家に遊びに行ったが、その度に結衣の弟は結衣にべったりだった記憶がある。仲睦まじい姿は微笑ましく、高校からアメリカに留学した、年の離れた兄しかいなかった瑠璃は、その仲の良さに憧れていた。
「あー、結人のこと?」
結衣は僅かに苦笑した。
「結人くんもなかなかかわいかったと思うけど。順調にいっていれば、今頃美少年に育っているんじゃないの?」
「そうなの、結人は身内の贔屓を差し置いてもなかなかの美少年なんだけど……」
「なんだけど?」
意味深に言葉を切られ、瑠璃は言葉を促す。
「最近反抗期からなのか、あんまり話してくれなくなったのよね。顔を合わせれば、『美少年オタクキモ!』って言われるし。あれ、何気に傷つくわ~」
「へ、へえ。そうなんだ」
適当に流すしかない瑠璃。
「昔はあんなにお姉ちゃんお姉ちゃんって寄ってきて、かわいかったのにな~」
「どういう心境の変化なんだろうね?」
思い出してデレデレになっている結衣に対し、瑠璃は冷静に分析を試みる。
「うーん。中学に上がってから、かっこいいっていう理由だけで告白されまくって、ウザいって話はよくしてたかな」
「あー、外見しか見てもらえなくなって心閉ざしちゃったパターンか……」
結衣の回想に、瑠璃は独り言ちた。結衣が美少年フリークという病を発病してから被害は最小に抑えられたが、そうなる以前は瑠璃も美人というだけで勝手に幻想を投影され、止まぬ告白の嵐にうんざりしていた張本人だ。そのウザさといったら、どうしようもない。
「まあ、家にいる間は美少年フリークを最小限にして、弟君とマメに話をすることをおすすめするよ」
美少年フリークを封印するなんて無理だろうななんて諦め半分に、瑠璃はアドバイスした。
「あの~、結人くん?」
「くん付けなんて気色悪いことするなよ、変態美少年フリーク!」
家に帰って早速アドバイスを実行するものの、追い返される。
――っていうか、今、変態って言わなかった?!
日に日に増していく毒舌に、泣きそうになる結衣であった。
幽霊と少女 今泉 叶花/宮園 れいか @imaizumi_kyoka
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