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 改めて当時の私は何て偉そうなことを書いてしまったのだと、反省したが、悩みに悩んで書き綴った文字たちが踊り、卒業してしまう時田先輩へ向けての思いが3枚のA5便箋におさめられていた。


「大崎さんから貰ったこの手紙を改めて読み返して、色々複雑に考えていた事を整理できたし、サッカー選手ではない道を選択してみるのも有りだと思えたんだ。それに…」

「それに?」

「…今回、田所君ともようやく顔を合わせて話が出来たし」

「田所と何かあったんですか?」


 私の質問に先輩は、複雑な表情を浮かべた。


「……俺が大学に入って初めての試合の対戦相手がこの大学だってさっき話たけど、その時、田所君の接触プレイで俺は膝を負傷してね」

「え…」

「今後を左右する大事な試合だったから、当時は田所君がどんなに謝ってきても許す事が出来なかった。 俺は病院でリハビリして、その後も相次ぐ怪我をして辛い思いをしてるのに、彼はレギュラーの座を勝ち取り、エースとして今もサッカーの道を進んでいる。

田所君は何度か病院に来てくれたんだけど、俺は彼を拒否し続けていたんだ。

俺がサッカーの道を閉ざされたのは田所君のせいだっ!ってずっと思ってた。…でも、サッカー以外での道が見つかって、ようやく田所君としっかり話し合いたいと思うようになったんだ。

今日この大学に来たのは、田所君に今までの事を謝るためだったんだよ」

「……そうだったんですね」


 サッカー選手としてプロの頂点を目指し突き進んでいた時田先輩にとって試合中の怪我は、いつか起こり得るとはいえ、突然の事に受け入れ難い事態だった事だろう。 ましてや怪我の原因となった田所は今現在プロリーグから声がかかる程の存在となっている。

 時田先輩は病院で辛いリハビリをする中、田所は何度も謝罪に訪れつつもサッカーの道を今も進んでいるのだ。そんな田所の姿を受け止め、許せるまで時田先輩の中では長い葛藤があったことだろう。


「何か、色々話しちゃったね。でも俺の中では大崎さんからの手紙のおかげで、自分と向き合う事が出来たと思ってるし、感謝しているよ。ありがとう」


 もしも今タイムマシーンがあって、過去の自分に逢いに行けるとしたら、必死に先輩への思いを書き綴っている高校生の頃の自分に逢いに行き、今先輩から言われた言葉をそのまま伝えてあげたい。  まさか、あの時悩みながらも一生懸命書いたラブレターの存在を時田先輩から感謝されるなんて。

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