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「ねぇ!由香、さっきグランドにスーツ姿の超イケメンがいたんだけど、由香は見た?」


 このところ就活で忙しくて時間が無かったが、ようやくその合間を見つけて久しぶりに大学に登校出来た。そんな昼、学食でハイテンションで私に声をかけてきたのは、同級生の峰岸早苗だ。


「イケメン?」

「うん!スーツ姿の長身でね。サッカー部のエースの田所と話をしていたのよ。もしかしてスカウトかな? それか知り合いとかなぁ〜?だったら紹介して欲しいなぁ〜」


 早苗は余程さっきグランドで見かけたという長身スーツのイケメンがタイプなのか、全身から幸せオーラが溢れていた。


「あっ!田所だぁ!」


 それまで偶然見かけたイケメンの話をしていた早苗が学食の入口の方に視線を向けた。

 由香も連られて入口の方を見ると、サッカーの練習を終えTシャツ姿の田所と、明らかに学生ではない、スーツ姿の男性が田所と肩を並べて学食に入ってきた。


「ああっ!由香、今話していたイケメンだよ!やっぱり知り合いだったんだぁ〜! 

おーい!田所〜」


 予想外の事にテンションが上がった早苗は田所を呼んだ。

 田所はそれまで横にいるスーツの男性と何やら真剣な表情で話をしながら歩いていたが、早苗の声に気付き、軽く手を振ってきた。


『…え…?!』


 私は驚きのあまり息を呑んでしまった。

 

 早苗の呼びかけに応じ、手を振りながらこっちに歩いてくる田所の横にいる長身のスーツ姿の男性に見覚えがあったからだ。 

 まさか…


「…時田…先輩…?」


 驚きのあまり声が出て、席から立ち上がってしまった。


「え??由香、まさか知り合い?」


 状況が理解出来ず訊いてくる早苗の言葉など届かない。

 ただ、田所と一緒にこちらに歩いてくるスーツ姿の男性から視線を外せずにいた。

 あの頃と違い、髪型がビシッと整えられているとはいえ、あの頃から漂っていたオーラは健在だ。


『何故…高校の時の憧れの先輩だった時田先輩がここに…?』

「…? もしかして、東豊高校の大崎由香さん?」


 しばしの沈黙の後、スーツ姿の男性、時田先輩が私の名前を口にしてくれた。


「…はい!そうです!お久しぶりです、時田先輩!」


 他人の空似などではなく、間違いなく高校の時に憧れていたサッカー部の時田先輩だ。

 こんな偶然があるなんて。

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