恋文 -After-
腕に痺れを感じて目が覚めた。
ぼんやりした視界が最初に捉えたのは、目の前の電源が点けっぱなしのノートPCの画面だった。
『あぁ…また寝落ちしちゃったんだ…』
完全に目覚めていない頭で理解出来たことは、提出期限が迫ったレポートと就職活動に関して調べ物をしていたら、見事に寝落ちしてしまったという事実だ。今回だけではなく、こうして寝落ちによりベッドではない場所で目覚めたのは、今月に入って何度目だろう。
痺れた腕を無造作に振って血流を戻しながら、スマホのカレンダーをチェックする。
『会社説明会』
『模擬面接』
『就職相談会』
今月一覧に並ぶ明らかに去年とは違う…いや、去年はまだ先の様な出来事だと気楽にか構えていた現実のスケジュールだ。
去年の今頃は、『サークル飲み会』、『レポート提出』、『美容院』…など、かにも大学生らしい予定がいっぱいだったのに…たった一年でこんなに変わるものなのかと、私はようやく痺れが治った腕を摩りながら、小さなため息をついた。
就活が本格的にスタートした大学3年の春。
私は大小問わず様々な企業に関してのリサーチを同級生達と始めたが、どんた職に就いて、何がしたいのか、自分に合う職業とは何なのか…自分自身の問題に直面した。
『…私がやりたいこと…』
自分に対しての課題が浮き彫りになってくると、将来のこととか、やりたい事なんて真剣に考えてこなかったことに気付いた。
高校までただ勉強や部活、交友関係などでただ毎日を過ごしていて、将来の具体的な姿なんて想像することすら無かった。卒業してしまった、かつての同級生たちはどんな風に考えていたのだろう。
『奈々…。奈々は将来のこと、色々考えていたの?』
卒業してから別々の進路に行ってしまったかつての親友、奈々のことを思い出した。
天井を見つめた。そこにはただ真っ白な天井を見つめても答えなんて出ないのに。
待っていたって、何も起きやしない。
この先を良くするのも、悪くするのも全て自分次第なのだ…。
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