吸血鬼カフェ

@Sakuramiya

第1話 真夜中のカフェで 

 私はその日、なかなか寝付けづにいた。ルームメイトはもう眠っていて、部屋の中で音を立てるのも悪いかなと思った私は外に出て散歩をしてみることにした。

 いつもはこんな夜に出歩くことはめったにない。そのせいかこの時間の外の景色は何だかいつもと違って見えて新鮮だった。

 とりあえず、アパートから数キロ離れた公園へ向かうことにした。

 公園へ向かってふらふら歩いていると途中に一軒のカフェを見つけた。特に何か目的があって公園へ向かってた訳じゃなかったからカフェに寄ってみることにした。 

 それにしても、こんなカフェここにあったかな?いつもは気にして歩いたことないから見つけられなかっただけかそれともごく最近できたのか。

 そんなことを考えながらカフェに入った。 

 店内はアンティーク調で落ちついた雰囲気だ。夜も遅いためか客は私の他にいなかった。時計を見ると午前零時になっていた。

 私は窓に近い席に座った。 

 「いらっしゃいませ」

 店員らしき若い男性が声をかけてきた。

 「ご注文はお決まりですか。」

 「じゃあ、これをお願いします。」

 「かしこまりました。」

 そう言って、店員はすぐに下がっていった。

 ふと店内を見るとさっきまではいなかったはずのおばあさんが奥の席に座っていた。ドアを開ける音もしなかったのにいつの間に店に入ったんだろう。それに、今も物音ひとつ立てずに座っている。そういえば、この店は入ったときから私の足音と時計の針の音、それと注文の時の私と店員の声しか音を聞いていない気がしてきた。客も二人だけで店員もおそらくさっきの男性だけで、普通だったら少しの物音も聞こえやすいはずなのに。

 そう思ったら何だか少し怖くなってきた。

 そんなことを考えていたらさっきの店員が私が頼んだ珈琲を運んできた。物音ひとつ立てずに。

 「お待たせいたしました。」

 「ありがとうございます。」

 そう言った私の声は少し震えていたかもしれない。

 「それにしても、お客様のような方がいらっしゃるのはとても珍しいですね。」

 店員がいきなり奇妙なことを言い出した。

 「こんな時間に、迷い込んでしまわれたのでしょうか。」

 「え、いきなりなにいってるんですか。」

 いきなり訳の分からないことを言われてさらに怖くなってきた私は珈琲も飲まずに帰ろうと思って少しずつ立ち上がりかけたその時

 「このカフェは吸血鬼しか入れないはずですのに」

 そう言った店員のは笑っていた。

 それが彼との出会いだった。

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