第11話

 seven。国民的な大人気アイドルでファンがめっちゃ多い。女性に限らず男性もだ。今、sevenは全国ツアーをやっている最中なのだが、チケットは抽選になっていて、毎回満席になることで有名だ。


「え?」

「だから、sevenのライブ。一緒に行きません?」

sevenのライブに一緒に行かないかというのはつまり、sevenのライブのチケットが取れたということだ。

「チケット、取れたんですか?」

「そうっす。2人分」

「私のために?」

「ああ、予定あったら別にいいっスよ。友達もsevenファン多いから、男友達一人誘って行きます。けど・・・・・」

何だ、何か告ってくるのか?“僕はワジツさんがいいんです”みたいなこと言わないか?

「ワジツさんいいんですか?せっかくのsevenっすよ。人生に一度、あるかないかでしょ?」

「まあ、そうですけど、いいのか・・・・・」

「良いから言ってんじゃないですか」

「そうかもしれないけど・・・・・」

「僕は、ワジツさんと行きたいんですよ」

うわ、ずらしてきた。

「考えときますね。予定あったら報告します」

「そうっすか。良い報告を期待してますよ!!」

なんか、めっちゃ圧をかけられた気がする。

そして、切りますよ、も言わずに電話は切られた。


sevenのライブか・・・・・sevenを間近で見るチャンスだが、川辺と一緒というのが。なんせ、やってきた人物が前喋った人と同じというのはなにか抱く感情もあるだろう。

だが、sevenのライブは彼が言うように一生に一度の機会だ。逃したくはない。でもでも・・・・・。


 考えるのが辛くなってきたから、落ち着くために前、松平と川辺に会ったカフェへ向かった。

「あ、いらっしゃい、石田さん」

「マスター、いつものありますか?」

「ああ、ありますよ」

私が言う「いつもの」とはマスター自慢のホットケーキである。このカフェ特製のジャムがとても美味しいのだ。

「そう、それとキリマンジャロブレンドあります?」

「ありますけど。珍しいですね。いつもならキャラメルラテなのに」

「いや、気分が落ち着くんですよね、あれ」

「そうなんですか。分かりました」

そう言って、マスターは一番奥の席を勧めると、小さな厨房へ向かった。


マスターが料理を運んでくると、気になることを言ってきた。

「ところで、石田さんに会いたいという人が来ていますけど。どうします?」

「え? どんな人ですか?」

「若い男の子です。なんか幼さが残る感じの」

ひとまず、川辺ではないことにほっとしたものの、すぐに気を取り直した。思い当たる人物がいる。

――翔太朗だ。

だが、もし違う人だったら断るのもあれだ。そして、翔太朗とでも大した話は出来ないから大丈夫だろう。

「分かりました。会わせてください」

マスターは返事をせずにその待っている人のところへ向かった。


その人物は和実の向かいの席に座った。こんがりトーストをほおばる彼は、中学生くらいだろうか。でも、なぜかすることは幼稚園児のようなものも多い。

――翔太朗は、8歳だから小学3年生だ。じゃあ、彼は・・・・・。

どこかで見たことがある気がするが思い出せない。

「お久しぶりです。やっと会えましたね! ええ、父さんの健と何やらあるらしいですが、その“元”息子です。誰だか分かりましたかっ?」

健の元息子。それは、私が同居を大反対した人物。脳内で回路がつながった。

「——奥川蓮伍君?」

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