第10話

 ひとまず、帰路に着いた。一通りゆっくりしたから大丈夫。川辺という男、なかなかいい雰囲気であった。

 ただ、やはり迷ってしまうことがある。

 彼は、去る時に、

「じゃあ、また。お子さん、色素性乾皮病って。大事に育ててあげてください」

 と言った。

(やっぱり、気になる)

 和実は色素性乾皮病の翔太朗の育児を放棄してここまで来たのだ。今更、方向転換なんぞ出来ん。

 私は、そんな強い決心があった。だから、意見は曲げられない。このまま、貫くしかないだろう。どうにかして。


 帰ると、やはりすぐについてしまった癖でレツラブのロゴをタップしてしまった。閉じようか迷ったが、なんとなくこのまま見ることにした。

「二件のコメントがあります」

 ダッシュボードのページにはそう表示されていたから、コメント欄をチェックした。

『こんちはっす!さっきは松平先生とカフェでちょっと相談事してた。それで、ワジツさんのことも出てきた。めっちゃ羨ましがってたな』

『それと、色素性乾皮病っていう難病の患者さんがいる人に出会った。そんな人がたくさんいるから、これから国立難病センターでは色々募金活動と化するわけ。どう、一緒にやらない?』

 一緒にやらない、か・・・・・。

 経った今さっき会った人が経った今さっき会った人に向けて経った今会ったことを報告する。何か、とても変な感じがする。

(やっぱり、川辺は翔太朗を擁護しているんだ・・・・・)

 何とも、言えない。これは、告るべきなのか、それとも、フるべきなのか、何も分からなかった。

『ひとまず、考えときます♬いいな、募金活動。ちょっとやってみたい』

 一応、そう返してはおいたが本心ではない。


 すると、突然電話がかかってきた。レツラブ通話だ。相手は当然川辺だ。

「もしもし、ワジツさん元気っすか?」

「元気です」

「ホントに?なんか変ですよ。なんかあった?」

 松平といるときとはテンションの差があるなぁと思った。これはなぜだろう。

「特になんもなかった・・・・・気のせいでしょう」

「そうには見えないけど・・・・・まあ、話したくないんすよね。うん、そうですよね。ところで、募金のことどうでしたか?」

 言われて、和実は返事に困る。

「えっと、面白そうでした。日本、世界の子供を救うってかっこいいなぁって」

「そう。じゃあ、ぜひやりましょ」

「はい・・・・・」

 マジか。詳細だけは話さないでくれ。詳しいことを話されたらもっと嫌になるかもしれないと思ったからだ。

「ところで、少し話があるんですけど」

「はい、何でしょう?」

「今度、sevenのツアーあるでしょ。一緒に行きません?」

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