第8話

 結構迷った。これは教えていいものなのだろうか。

『ワジツさん?大丈夫ですか?話したくないものだったら大丈夫ですよ』

「・・・・・いえ、大丈夫です。子供の病気がキッカケでいろいろなっているんですけど・・・・・」

『ほお。どんな病気なのですか?少し気になります。私は医者なので』

「そうみたいですね。どこの病院なんですか?」

『国立難病センターです』


 国立難病センター。そこは、普通の風邪とかではなく、障害や普通の病院では治りにくい病気、悪化したガン、そして、あまり事例がない病気・・・・・むろん、色素性乾皮病もそうだ。

 だから、翔太朗も国立難病センターに通っていた。


「へえ、私の子供もそこに行ってたことが

 ウソをついた理由は今は私の子供ではないということ、そして国立難病センターの医師ということは翔太朗のかかりつけ医、松平と関係があるかもしれないから、話したらまずいと思ったからだ。

『そうなんですか、今は良くなったんですか?』

「・・・・・まあ、大丈夫です」

『そうですか。落ち着いてるみたいですね。主治医は誰だったんですか?』

「ええっと、松平里香先生です」

『ああ、松平先生ですか。僕一緒に仕事してたことがあって、今もたまにご飯とか行きますよ』

「そうなんですか」

 私は、翔太朗のことを川辺に話さないという考えがあっていた気がして嬉しかった。


 それからは、映画の話、レストランの話、sevenの話、川辺の育児の話、仕事の話、これからの話・・・・・まあ、もうめっちゃ色々合ったから、恋愛開始ボタン押しちゃおうということで、話がついて、電話を切った。


 少し、運送会社の仕事をスマホで調べたところで、もう一度レツラブを開く。

 すると、自分のマイページのところには「川辺の善い男さんと恋愛中」と書かれていた。改めて、川辺が自分の彼氏という実感が沸いた。


 いつも通り、カフェへ行く。ついこの前まで土曜日はカフェ巡りをしていたのだが、最近は特にお気に入りの『れとろん』というレトロなカフェに通うようになっていた。

「ああ、石田さん。こんにちは」

「マスター、こんにちは」

 今思うと、章と離婚してからも石田さんと呼ばれるのがなぜか不思議だった。章と離婚して、健と結婚すると私は奥川和美になったはずなのだ。そして、また離婚したから私は最初の性・・・・・穀田和美こくだかずみになったはず。


 すると、一度離婚したことがある医者がやってきた。

「あら、石田さん。こんにちは」

 松平だ。ちなみに、一度聞いたことがある。松平は椎名⇒春日⇒松平と二度、姓を変えたことがあるらしい。

「あれ、コチラの方は?」

「ああ、この子ね。この子は私の同僚、川辺武士よ」

 松平は横に立っている長身の男性を紹介した。

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