第5話

 彼と暮らし始めて数日、少し軽いケンカはあったけど、楽しくやってる。毎日の映画はとっても楽しい。

「二人で図書館行こうか」

「プールとかどう?」

「温泉旅館はどうだ?」

 そんな感じで、色んなお出かけの予定を考えた。ひとまず、まだ健の休日は続くから、たくさん旅行の計画を練られるのだ。


 だが、ある日の家族会議で決裂したことがあった。

「ところで、一つ暴露していいか?」

 いきなり、健が言ってきたので私はたじろいだが、首を縦に振った。

「実は、俺の息子——蓮伍も色素性乾皮病なんだ」

 そう告げられた時には、少しちくっと来た。けど、どうせ彼も子育てが嫌になってきたんじゃないのか・・・・・。

「ところで、頼みがある。蓮伍をうちに住まわせたい」

 はぁ?!そんなのは許さない。

「だって、私が翔太朗の育児が嫌になって不倫したこと知ってるでしょ?」

 と、叫ぶと彼は首を横に振った。初めて知った、という神妙な顔で。

「くそっ!」

 私は、そう言うと整理した自分の部屋に行った。そして、すぐに布団を敷いて、寝た。


 今日の朝は、ちゃんと健がいた。でも、挨拶は交わさない。視線でさえも。

「ダメかな?」

「無理。そもそも、なんで私と同じ病気の人がいるってこと教えてくれなかったの?!」

「元々僕は彼と一緒に来ようと思ってたんだ。翔太朗君もつれてくると思って」

 は?そんなバカなことないだろう。なんも知らずに結婚届出してたの?

「じゃあ、私がしたいことは決めている」

「な、なんだよ・・・・・」

「離婚に決まっているじゃない」

「そんなバカな。酷いだろ?」

「分かった、じゃあ、しばらくは別居ね」

「別居ってったって、どこに住めば・・・・・」

「じゃあ、離婚届」


 数分、間が開いた。だが、なんと彼がこれから反撃してくるのだ。

「お前さ、ホント自分の都合で色々決めるんだな。自己中ってやつか」

「あなたもでしょう」

「いや、それは違う。隠していたことは悪いと思うが、それだけで離婚はない。経済的にもそうだろう。お前は単純すぎる」

「私にも十分お金は」

「ないから言っているんだ。お前は家からの仕送りもないし、働いてもいない。金はだいぶ少ないはずだ」

「・・・・・へそくりなら」

「諦めるんだな。そんなもん、お前ならすぐ使い果たすだろう」

 図星だった。私はかなりの散財魔だから。


「でも、何とかなるんじゃぁ」

「ならねぇ。だから、僕もこんな状況でここにいるのは嫌なんだよ。だから、決めてくれ。用意はできている」

 そう言うと健は離婚届を出してきた。二回目にこの紙を書くことになるのか。

「いいでしょう」

 まあ、元々私がそう言ったんだから、不満はない。必要事項を書くと、彼に渡す。

「それじゃあ、出してくる。僕は元の家に戻るよ。ゆずなは帰ってきてくれって喚いている」

「じゃあ、私は・・・・・ここに住んでいいのね?」

「・・・・・まあ、いいだろう。じゃあな、届を出してくるよ。あとで荷物は取りに行くから」

 健はやはいところそう言うと、スタスタと退室した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る