第15話 思わず逃避行

 友貴乃と部室に行く。

 一人で黙々とケーブルの数でも数えようと思ったのに。まあ2人でやったほうがいいか。


 僕の心は一つに決まった。

 友貴乃を結花と睦希へ送り届けること。

 やろうと思っていた部室のことはすぐに終わった。そこで考えるのはこの二人でいる状況。部室棟からは雨の降るグラウンドが見える。外での競技は中止になったのか、だれもいない。雨音だけが聞こえる室内。


 僕はさすがに耐えきれなくなり、話し始める。さながら会話のキャッチボールというよりピッチングマシーンといったところだ。永遠、会話のネタを投げ続ける。少しずつ結花と睦希の話を織り交ぜる。クラスで三人でいるのだからぜひ戻ってもらいたい。僕と二人きりでいるよりいいだろう。現状、彼女は楽しそうには見えない。


 どうやら彼女はクラスに戻りたくないらしい。まあそれは僕もだけれど。そのうえ結花と睦希からのラインも無視しているようだ。彼女を理解することは難しい。


 僕はうそをつくことにした。競技終了の時間になったら教室に戻ることになっていたから、競技終了の時間を一時間早く彼女に教えた。そろそろ戻ろうかと早く言い出すために。


 そうして校舎に戻ってきた。まだ体育館で競技が続いているようで教室には、まばらにしか生徒はいなかった。


 廊下で結花と睦希を発見し、胸をなでおろす。これで彼女の居場所ができる。

 そう思って友貴乃を送り届ける。その時だった。

 友貴乃は二人を見るなり、踵を返して反対方向へ走っていった。


「えっ!」


 そう思わず叫んでしまった。迷わず友貴乃を追いかける。簡単に追いついたのはきっと友貴乃は本気で逃げるつもりではなかったからだろう。彼女は驚いてとっさにとった行動だったようだ。個人的に言えば、最悪の判断だと思う。まあいい彼女の人生には口出しできない。


 結花と睦希に合流した。が僕に対していつも以上に冷たい。相手にしていない。


 なんでだ?


 結花は

「今日は疲れてるんだよ。だからこれ以上話さないほうが身のためだよ」

 と言い放った。


 何があったんだろう。



 僕は来週、睦希に告白する。








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