第14話 上村 友貴乃 その3
彼女の教室で弁当を食べることにした。
教室には僕ら二人以外誰もいない。各々の机にある色は僕の着ているそれとは真逆の色で、体育祭のクラスを感じる。
「団結しているようで、結局ばらばらだな」
そうつぶやく。ばらばらにしている身が何を言うんだ、と自分自身、心の中でツッコミを入れながら。
無言を切り裂くように、先生と生徒がクラスに現れた。
「このアイス、クラスで食べていいから」
「やったー!あざっす!!」
友貴乃のクラスの担任は太っ腹だな。アイスが入ったクーラーボックスが置かれる。羨ましい限りだ。
「友貴乃もとっていいからな」
先生が声をかけて、去っていった。
僕が居てはいけない場面だったのかもしれないなと思っていると
「私、お腹冷えるの嫌だからアイス食べないんだけどね」
と友貴乃は言う。
先生の気も知らないで、高校生らしくない。
僕はご飯を食べ終わり、席を立つ。暇だから部室の掃除でもしよう。
「どこ行くの?」
友貴乃に声をかけられる。まあそりゃそうか。
「部室。掃除でもしようかと思って。」
言い終わった後、僕の目には物欲しそうな友貴乃の姿があった。
これは言うしかない。
「友貴乃も来る?」
「どっちでもいい」
「じゃあきてほしい」
「うん」
なんで私も行くといえないのだろう。暗い表情に隠れた彼女の安堵のサインを僕は見逃さなかった。人といたいのならある程度の努力をしてほしいものだ。それでも助け舟を出す私は彼女のことが放っておけなかった。
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